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不安⑧

「そうだね…確かに紙切れ一枚の事務的なことなんだけど… そのことで、『お守り』というのか、『世間的な認知』というのか… 万が一、黒曜さんか俺のどちらかに何かあった場合、シルバを法的にも守ってやることができる。 『同棲』だけでは、味わえない『安心感』かな…」 「そうか…やっぱりそうだよな。 要。もう、お互いの家族には了解得てるんだから、日を選んで籍を入れよう。 いいな?」 「浩一…うんっ!………ありがとう…」 お互いを思いやる微笑ましい姿に、俺は、黒曜さんと自分を重ねていた。 黒曜さん…会いたいな… いや、黒曜さんは、俺達のために身を晒して苦手で嫌なことをこなしてるんだ。 ワガママ言っちゃダメなんだ。 沈んでいく気持ちを振り払うように 「ね、もし良ければ、ここでお世話になる間、ご飯を作らせてもらえない? 二人ともフルで仕事してるんだし、俺は一日家にいるから。 口に合うかどうか分かんないけど。 家賃代わりに食費は俺に出させて!」 「それはめっちゃ助かるけど、食費は折半しようよ。」 「そうだよ! 輝君のご飯は美味いって、須崎さんから惚気られてきたからな、楽しみだよ!」 「だって、水道も電気も使わせてもらうんだ。 それくらいさせてもらえないなら、自分の家に帰るよ。」 「帰るのは困る! …うーん、じゃあ………わかった! お願いします!」 「こちらこそ!じゃあ、早速…夕食のリクエストある?」 「今夜は要が作ってくれるから、明日からよろしくね。 俺、唐揚げ食べたいな。 中々油物できなくって…材料はストックしてあるんだけど。」 「了解!お弁当は?」 「お弁当も作ってくれるの?身体大丈夫?」 「ほら…散歩とかできないから。少しでも動かないと。 だから、朝昼晩は俺に任せて。 無理な時は言うから。」

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