312 / 337
収束2⑤
須崎さんは、自分の監禁暮らしを面白おかしく話してくれて、俺達は気の毒に思いながらも腹を抱えて大笑いした。
おまけにポツンと一人、狭いホテルの一室に缶詰めにされ、食べ物には困らなかったものの、輝君とシルバちゃんのことが気になって気になって堪らなくて、満月でもないのにとうとう獣化してしまって…等と臆面もなく惚気られ当てられた。
それでも、なかなか連絡できなかったのは盗聴の恐れがあったから…と、何とも物騒な話もあった。
驚いたのは…この騒動のせいで須崎さんのマネージャーと化した、編集者の相葉君も、実は人狼だったことだ。
例の誘拐事件の時は、妹の結婚式でハワイに行っていて、帰国後 仲間から知らされて(彼はまた別ルートのネットワークを持っている)、“須崎さん達が人狼だ”と分かって、喜んでマネージャー役を引き受けてくれたんだそうだ。
各地で細々と、それでも国を揺るがす程の強固なネットワークを持つ人狼達…
まだ、俺達の知らないルートが無数にあるんだろう。
目の前の幸せ感満載の番を見つめる。
“二度と離れない”と叫ぶように、輝君を抱きしめる指の一本一本から愛情が溢れて止まらない須崎さん。
何とも蕩けそうな笑顔で、須崎さんに腰を抱かれ、一分の隙もなく身体をぴったりとくっ付ける輝君。
そしてそれを満足気に眺め、耳と尻尾をゆるゆるとうれしそうに振り続けるシルバちゃん。
『幸せのお裾分けをありがとう』
そんな気持ちで胸一杯になり、泣きそうになった。
ふと、ふわりと大好きな匂いと温もりに包まれて見上げると、俺の番が心配そうに見つめていた。
「要?」
首を横に振り、その温もりに飛び付いた。
俺も、幸せだよ、浩一…
ともだちにシェアしよう!