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新しい家族③

こんな時に…こんなことしてる場合じゃないんだよっ! 飛ばし過ぎた自分に腹を立てながらも、ウインカーを出して左側に停車させた。 「こんにちはー!おにーさん、飛ばし過ぎだよねぇ…免許証拝け…ん? あっ!作家の須崎こ」 「すみません!お咎めは後で十分受けますからっ! 家内が、家内が陣痛が始まっちゃって、病院に向かう途中なんですっ! 先に病院に行かせて下さいっ! お願いしますっ!!!」 ひょいっと後部座席を覗き込んだ警官は、お腹を抱えて蹲り、苦しそうに大きく息を吐く輝を見つけた瞬間 「了解ですっ! 先導しますから、付いてきて下さいっ! 病院は何処ですか?」 名前を告げると、彼は大きく頷いて相棒にひと言ふた言何か話すと 「では、行きますよ!」 と本当に先導してくれ始めた。 …びっくりしたぁ… 慌ててエンジンをかけて、その後を追い掛ける。 「輝!?驚かせてごめん!大丈夫か? 今向かってるから!」 「…大丈夫…少し治まってきたから…」 小さいけれどしっかりした返答。 少しホッとして先導車を追い掛ける。 でも…輝が男だと気付かなかったのか? …あぁ…俯いてたし、髪で顔も隠れてたし、声も出してないから分からなかったのか… とにかく、半ばありがた迷惑な申し出に感謝しつつ、無事に病院へ到着した。 「申し訳ありませんでした。 後で警察に行きますので。」 「緊急事態ですから、今回は見てなかったということで。 どうか無事に産まれますように! あ!俺もここの病院で生まれたんですよ。 …全身グレーの毛並みでしたけどね。」 パチンとウインクして、ひらひらと手を振り去って行く彼の最後の台詞を出産後にやっと理解した俺は、その時本当に余裕がなかったんだ。

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