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新しい家族④
陣痛の間隔が狭くなり、歩けなくなった輝を横抱きにしたまま、診察室へ案内された。
車椅子を用意すると言われたけれど、俺が運びたかったから断った。
診察を終えた先生は
「うん、そろそろだね。
赤ちゃんも準備オッケーだ。
さて、輝君、君の心の準備もオッケーかな?」
「…はい、大丈夫です。」
「ご主人、立会いされますか?」
「いえ!生まれるまで、外で待っててもらって下さい!
…酷い顔も姿も見せたくない…」
「輝…」
いじらしいというのか、意地っ張りというのか…
俺はその瞬間を一緒に分かち合っても良かったんだぞ?
ちろん と少しだけ咎めるような目で見つめると、輝は
「ゴメンナサイ」
と申し訳なさそうに呟いた。
そして、俺の耳元でそっと
「だって…出産シーンを見ちゃったダンナさんは、その場面が強烈すぎて、不能になる人が多いって聞いたから…俺…そんなの嫌だから…」
ん?不能?
それって…『勃たなくなる』ってこと…か?
そのことが『嫌』って…輝、輝、かわいいっ!
「ぷふっ…輝…お前、かわいいなぁ…
それ、何の情報だよ…
分かった!輝の言う通りに、外でお利口で待ってるから。
…頑張っておいで…」
「…はい。」
頭を撫でてやると、うれしそうに微笑んだ。
うん、輝は天使だ!俺の女神だ!
もうすぐ、俺達はパパとママになるんだな…
「ではご主人は、ここで入院の手続きを。
奥様はお産の準備があるから別の部屋へ。
後で奥様の所にご案内しますから…そんな顔しないでね。」
先生に揶揄われながら、書類にサインをしていく。
「先生…輝、大丈夫ですよね!?」
不安になり思わず言葉が出ていた。
先生は大笑いしながら俺の肩を叩いた。
「この私が取り上げるんだよ!?任せてよー!」
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