317 / 337

新しい家族④

陣痛の間隔が狭くなり、歩けなくなった輝を横抱きにしたまま、診察室へ案内された。 車椅子を用意すると言われたけれど、俺が運びたかったから断った。 診察を終えた先生は 「うん、そろそろだね。 赤ちゃんも準備オッケーだ。 さて、輝君、君の心の準備もオッケーかな?」 「…はい、大丈夫です。」 「ご主人、立会いされますか?」 「いえ!生まれるまで、外で待っててもらって下さい! …酷い顔も姿も見せたくない…」 「輝…」 いじらしいというのか、意地っ張りというのか… 俺はその瞬間を一緒に分かち合っても良かったんだぞ? ちろん と少しだけ咎めるような目で見つめると、輝は 「ゴメンナサイ」 と申し訳なさそうに呟いた。 そして、俺の耳元でそっと 「だって…出産シーンを見ちゃったダンナさんは、その場面が強烈すぎて、不能になる人が多いって聞いたから…俺…そんなの嫌だから…」 ん?不能? それって…『勃たなくなる』ってこと…か? そのことが『嫌』って…輝、輝、かわいいっ! 「ぷふっ…輝…お前、かわいいなぁ… それ、何の情報だよ… 分かった!輝の言う通りに、外でお利口で待ってるから。 …頑張っておいで…」 「…はい。」 頭を撫でてやると、うれしそうに微笑んだ。 うん、輝は天使だ!俺の女神だ! もうすぐ、俺達はパパとママになるんだな… 「ではご主人は、ここで入院の手続きを。 奥様はお産の準備があるから別の部屋へ。 後で奥様の所にご案内しますから…そんな顔しないでね。」 先生に揶揄われながら、書類にサインをしていく。 「先生…輝、大丈夫ですよね!?」 不安になり思わず言葉が出ていた。 先生は大笑いしながら俺の肩を叩いた。 「この私が取り上げるんだよ!?任せてよー!」

ともだちにシェアしよう!