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新しい家族⑤
予定日よりも、二日早かった。
入院に必要な着替え等の荷物は、輝がきちんと用意していたので、問題はない。
輝は
「今朝は食欲がなかったから、ほぼ絶食状態で良かったぁ…」
と、看護師さんと談笑している。
痛みと痛みの間で、まだほんの少し余裕がありそうだった。
その合間に急いでシャワーを浴びて、検査を済ませて、手術室へ運ばれていく。
「輝、行ってらっしゃい。」
「黒曜さん、行ってきます。」
おまじないだ、と おでこと鼻先にキスを落とすと
「もぉーっ、みんな見てるよ…」
むくれて頬っぺたが膨らんだ。
くくっ。今からママになろうとするのに…相変わらずかわいいな。
髪の毛を撫でて
「銀波と待ってるから。」
そう言って送り出した。
プシュ と音を立てて締められたドアに隔たれて、心許ない気分になったが、気を取り直して銀波の迎えに走り出す。
時間外に突然迎えにきた俺を見ても、銀波は「どうして?」と聞きもせず、サッサと帰り支度を始めた。
太陽君も何かを察したのか、銀波の手を取り、耳元で何かささやいた後、ハグしてすんなりサヨナラをしてくれていた。
先生達に見送られて、病院へとひた走りに戻る。
“手術中”の赤いランプは点いたままで…
銀波と長椅子に腰掛けた。
「ねぇ、黒曜…」
「ん?どうした?」
「弟かな、妹かな…」
「…うん、元気ならどっちでもいいよ。
銀波は?」
「僕も!どっちでも、僕はお兄ちゃんだもん!
ねぇ、僕の時も、黒曜はこんなにドキドキワクワクしてたの?」
「そうだよ。“無事に産まれてきますように…』って、そればっかり祈ってた。
初めて抱いた時、本当にちっちゃくて、かわいくって、俺の手の平で、くぅくぅ泣いてたんだ。
『俺の甥っ子だ』って、うれしくってさ…」
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