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新しい家族⑦

銀波から赤ちゃんを受け取った看護師さんに 「輝は?輝は何処ですか?」 「後処置を終えたら部屋に戻ってこれますから。 もう暫くお待ち下さいね。」 輝、輝… 俺に…銀波に…新しい家族を連れて来てくれて…ありがとう…愛してるよ… 輝に会いたくて堪らない。 会って抱きしめて、キスをして、労いと感謝の言葉を伝えたい。 うずうずして落ち着きのない俺に、銀波が 「ねぇ、黒曜…」 「うん、何だ?」 「あの子の名前、決めたの?」 「いや…生まれてから決めようと思ってたから…何かいい名前を思いついたのか? 教えてくれる?」 「うん! あのね、あのね…『銀河(ぎんが)』!!」 「『銀河』か…素敵な名前だな…」 「銀の毛がキラキラして、空に輝くお星様みたいだった。 僕は生まれた時、“銀色の波”みたいだったんでしょ? あの子は“星空”みたいだったから。 それに、僕と同じ“銀色”だから… …ダメかな…」 「輝にも聞いてみよう。ひょっとして先に考えてるかもしれないからね。」 「うん!」 俺にくっ付いて、尻尾を揺らす銀波の肩を抱き、輝が出てくるのを今か今かと待っていた。 ストレッチャーに乗せられた輝を見た瞬間、愛おしさが渦のように巻き起こり、涙が溢れて止まらなくなった。 「輝っ!」 銀波の手を引っ張り、その枕元に顔を寄せた。 「…黒曜さん、シルバ…」 頭を撫でて、そっと触れるだけのキスをした。 「よく頑張ったな…ありがとう… 銀色の毛並みの美しい子だよ。」 まだ青白い顔の輝は、ふわりと微笑むと 「…良かった…ありがとうございます…」 閉じた目から一筋の涙が流れ落ちた。

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