322 / 337
新しい家族⑨
♫ぎーんがー ぎーんがー
ぼーくのおとぉーとー ぎーんがー🎶
銀波が飛び跳ねながら、歌い出した。
俺は輝の頭を撫でてこっそりと尋ねた。
「本当に良かったのか?」
「黒曜さんも良いんでしょ?俺はとってもうれしいよ。」
愛おしさが募る。
俺も獣化して叫びたいくらいに。
「黒曜さん…俺を二人のママにしてくれて、ありがとう…」
「輝…」
点滴の管が刺さった腕を庇いながら、そっと抱きしめる。
輝の匂いに混じる消毒液の匂いを嗅ぎ取って、身体を変えて痛い思いをしてまでも俺の子供を産んでくれた輝を心底愛おしく思った。
「必ず、必ず幸せに、大切にするから…
輝、愛しているよ。ありがとう…」
「黒曜さん…俺も…俺も愛しています…」
いつの間にかチビ狼になり、足元にじゃれつく銀波を抱き上げ、輝の側に連れて行ってやる。
ふんふんと輝の匂いを嗅ぎ、ペロペロと頬を舐める銀波を抱き寄せて優しく撫でてやる輝。
銀波は輝に甘えてぴったりとくっ付き、尻尾をぶんぶん振っている。
ハッと思い出して、連絡しなければならない人達に多大なる感謝を込めて、ラ◯ンを打ちまくった。
“無事にお産が終わったこと。
元気な銀狼の男の子だったこと。
そして名前は『銀河』に決まったこと。”
送った途端から着信の嵐だった。
それら全てに何度も返信して…
やっと一息ついた。
「…そうだ、二人ともご飯食べてないんじゃないか?
シルバ、お腹空いただろ?」
きゅぅ とか細い声で鳴いた銀波は、しゅるりと人型に戻り着替えると
「…本当だ、お腹空いたね…うれしくって忘れてたよ。」
と、くすくす笑い出した。
「病院の目の前に、定食屋さんがあるんだ。
黒曜さん、シルバと一緒に食べて、お家に帰ってゆっくり休んで。
俺は大丈夫だから。
ね?」
ともだちにシェアしよう!