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それから①

side:輝 「シルバっ!お弁当忘れてるっ!」 「いっけねぇー…サンキュ、母さん! 行ってきまーす!」 「はい、行ってらっしゃい!気を付けてね!」 ほら、銀河!黒檀(こくたん)!早くしないと遅れるよ!」 「今何時?うわっ、ヤバイっ! おーい、黒檀っ!お前も早くしろよっ! 俺、もう行くぞっ!! 父さん、母さん、行ってきまーす!」 「はい、行ってらっしゃい!気を付けてね!」 「うわぁーーーっ!電車、間に合うかなっ。 ヤバぁーーい! 行ってきまーす!銀河ぁ、待ってぇーー!」 「行ってらっしゃい!慌てないでー!」 三陣の嵐が去って、ほおっ と一息をついた。 こうやって、毎日慌ただしい日々を過ごしている。 シルバを筆頭に、銀河が生まれた後、翌年すぐに三男坊の黒檀が生まれ…三人の子育てに奮闘し… シルバは大学を卒業して去年から社会人に。 銀河と黒檀は同じ学校の高校三年と二年に。 キッチンの後片付けを済ませた頃、この家の主人(あるじ)はゆったりとコーヒーを飲んでいた。 「全く…あと十分早く起きればいいものを。 送り出す身にもなってみろって言うんだよ… なぁ、輝。」 「ふふっ。若い時はどれだけ寝ても寝足りないみたいだし… さぁ、シーツの洗濯しなくちゃ。」 手伝うよ、と言いながら、黒曜さんは俺の後をぴったりとついてくる。 「黒曜さん?」 「…洗濯より、先に輝を剥いてしまいたい…」 「なっ、何行ってるんですか!? まだ、まだ朝ですよっ!? 子供達、出掛けたばかりですよっ!?」 黒曜さんは動揺して真っ赤になる俺を抱きしめた。

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