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それから⑤
side:黒檀
俺は須崎家の三男として生まれた。
獣化すると、父さんと同じ真っ黒の毛並み。
小 兄ちゃんの時と同じく、大 兄ちゃんが名付け親になってくれた。
年子で生まれたから、母さんは子育てに奮闘したらしいが、末っ子ということもあり、みんなから愛情たっぷりに育てられ、小兄ちゃんと同じ高校に通っている。
大兄ちゃんが本当の兄弟じゃないことは、つい最近、大兄ちゃん本人から聞いた。
父さんのことを『黒曜』って呼んでたから、ずっと不思議に思ってたんだ。
流石にびっくりしたけれど、俺達の関係は…全く変わらなかった。
だって、大兄ちゃんは大兄ちゃんだもん。
俺達に告白した大兄ちゃんは、母さんからこっ酷く叱られていたけれど。
イケメンの父さんに似た大兄ちゃんと小兄ちゃん、そしてかわいい系の母さんの血を引いた俺達は、自分で言うのも何だけど、幼い頃からモテていた。
が…
物心つく頃には『俺達はフツーの人間じゃない』こともそれなりに理解していた。
だから、恋愛するなら人狼がいいな…と漠然と思っていたし、いくら告白されてもその気にならず、自分から告白することもなかった。
父さん達も、大兄ちゃんも、小兄ちゃんも、しっかりと相手を見つけている。
どこにそんな人狼が転んでるんだ?
番って、そんなに簡単に見つけられるものなのか?
俺だって“青春”したいんだよ!
まぁ…学生の本分は勉強だし!
焦らずに、大人のイイ男になろうと決めているんだ。
それに、俺は叶えたい夢があって、卒業したら専門学校に行こうと思ってる。
今日もその学費を稼ぐためのバイトへ向かう。
父さんも母さんも『その必要はない』と言うけれど。
「お疲れ様でーす!」
「あ、須崎君!今日からバイトに入る真田祐樹 君。
いろいろ教えてあげてねー。」
目が合った瞬間、脳天から電気が突き抜けた。
彼も目を見開き固まったまま動かない。
間違いない、彼は、俺の………
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