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母の日に⑤
side:輝
ワクワクしていた。
シルバはどんな風に描いてくれたんだろう。
その場で開けてた他の子のをチラリを見たら、額に入った絵のようだった。
「ねぇ、黒曜さん、あと何分で着く?」
「輝…慌てなくてもプレゼントは逃げないよ。
安全運転で行くから、いい子で待ってて。」
「…はーい…」
ちょっとだけ恥ずかしそうなシルバの尻尾が、ゆらゆらと揺れている。
あの信号を曲がったら俺達の住むマンション。
車は滑るように地下駐車場に滑り込み、苦笑してる黒曜さんを後ろに従え、急いで部屋へ向かう。
まだぐっすりの銀河を黒曜さんに預けると、ソファーに座り深呼吸した。
シルバも目をパチパチさせて見ている。
丁寧に括られたリボンを外し、これまた丁寧に包まれた包装紙を外すと、中から現れたのは…
天使のような女性と、エプロン姿のショートカットの男性。
笑顔の二人は手を繋ぎ、そこから小さなハートが沢山飛んでいた。
これは…
「シルバ、これ…」
くふん と笑ったシルバは、もじもじしながら
「あのね、お空に行ったママと、ママ!
僕は二人に愛してもらってるから、どっちも描いてお礼がしたかったの!
…ママ、嫌だった?」
俺は首を横に振りそれをぎゅっと抱きしめた。
胸一杯に込み上げるものが大きくて、抱きしめたまま涙を止めることができなくなっていた。
「…ママ…ママ…」
シルバが小さな手で、泣きじゃくる俺の背中を摩ってくれていた。
白磁さん、あなたの大切な忘れ形見は、俺をママだと認めてくれています。
この子は、俺が、俺達がちゃんと育てるから…真っ直ぐに歩んでいけるように見守ってあげて下さい。
俺はシルバをそっと抱き寄せた。
「シルバ、ステキなプレゼントをありがとう。
白磁ママもとっても喜んでると思うよ。」
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