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新しい日常②

◆ 佐久間さんは見た目からして、堅物親父って感じだけど意外と柔軟性があるみたい。ちょっとツンとした感じは僕好みだ。スラッとした長い手足に歳をとってなお精悍な顔つきは今も魅力的だが若い頃は相当モテたろーなと思わせる。これで童貞処女なんて誰が信じるんだろう。イイトコのお高いスーツに身を包み、オトナの色気がある。病気のせいもあるだろーけど…よくこの人襲われなかったなぁ。 僕のところまで無事?、無事、うん、無事にたどり着いてくれてありがとーと言いたい。 「…分かりました。では、いただけますか。あとお手洗いの場所を教えてほしい」 「…あ、自分でする気でいます?」 分かってるけど、聞いてみる。 佐久間さんはキョトンとしたあと、呆れ顔で当たり前でしょう、とため息ひとつ。 「ん〜、いいですけどぉ〜…僕、心配だなぁ」 「座薬くらいひとりでできますのでご心配無く」 「ん〜、そうですか〜…では、」 レベル3と聞いて用意はしてあったそれを、スクラブの深めのポケットからジャーン!とでも効果音が出そうな感じで出してみた。 佐久間さんの青ざめる顔、ああ、もうイメージ通りの反応ありがとうございます! でもそれはそうだろう、座薬というよりはまるでおしゃぶりのようなコレ。1.5センチくらいの太さに13センチほどの長さ、入りすぎないようにストッパーの部分の下側には精液成分たっぷりのお薬がぽよんと音がしそうな感じでついている。僕は見た瞬間、大人のおしゃぶりじゃーんと大爆笑してしまったけど、これからこれをお尻に入れられる身としては笑えるわけはないよね。 「佐久間さん、アナニーってしたことあります?」 「は?…アナニーとは一体…」 「アナルを使ったオナニーです」 「アナル…お尻!?あるわけなかろう!」 「じゃあ、コレ入れるの、僕がお手伝いしたほうが良いと思いますよ!無理に入れると痛いし…痔にでもなったら困るでしょ?」 お姉さま方には天使と称される笑顔を向ける。 でもな〜ジャニ系ショタ顔派以外には、意外と胡散臭いって言われちゃうんだよね。 「……いえ、結構。自分でやりますので」 あ、胡散臭いほうに見えちゃった? 「佐久間さん、心配されずとも今後は毎日ひとりでしていただきます」 「ま、毎日だと!?」 「症状が緩和すれば日を空けたり、飲み薬になっていくかもしれませんが、しばらくは継続でしょうね。本当はセックスが一番の治療なんですよ? この病気としては男性に協力を仰ぐことになりますけどね」 「っ、馬鹿なことを!」 「もちろん!僕で良ければ今後ずぅっとお手伝いさせていただきます!…でも、座薬をお望みなら肛門に傷をつけて今後治療に支障がでるよりは今日だけ僕がお手伝いしておひとりでできるようになるのが効率は良いかなと思います、よ?」 「………」 青い顔に病気の症状だろう頬の赤みを帯びた佐久間さんの、小さなため息交じりの了承に僕はまた笑みを浮かべた。 この仕事、天職。 ◆ ああ、真面目に生きていたはずだったのに。どこで間違えたんだ。愛のない性交渉をしていれば良かったのか。 「はーい、じゃ、横になってくださぁい」 自分よりも20歳位下の青年に、お尻を突き出す日がくるなんて今まで生きていて、いや、10分前まで思いもしなかった。 今だって、できることなら逃げ出したい。しかし良くも悪くも先を見据え過ぎるこの性格が、今逃げたところで病状は悪化するだけだと語りかけてくる。ずっと続くこの熱っぽさも、また私を馬鹿な方向へ走らせているのかもしれない。 「ローションかけますね〜」 「っ、冷た…」 「慣らしていきますね。最初はちょーっと気持ち悪いかもしれないですけどすぐ慣れますから」 パチン、といつのまにかしていたゴム手袋をきちんとはめ直す音が聞こえ、私はキツく目をつぶった。 途端に私を襲ったのはまずは自分の肛門になにかが入ってくる異物感。そのあとに感じたのは気持ちの悪い生暖かさだった。 「ヒッ、なんだ、貴方まさか指っ」 「ん?そーですよ、慣らすって言ったじゃないですか〜」 あははーと軽い笑い声がする。その間にも体の内部からジンジンと自分を苦しめていた熱っぽさが湧き上がってくる。ローションと指が動く卑猥な音が鼓膜を犯していく。 「心配しなくても、痛みはあんまりないと思いますよ。それがこの病気ですからね」 「どういうっ、意味…アッ、ンン!」 「んー、まぁ、簡単に言うと〜今、佐久間さんの体はお薬を欲しがってて、お薬を受け入れる体になってるってことかな」 だから、全部、快感として受け止めていいんですよ。 「ンァ、……ッッ!!!」 「あ、みーっけた。佐久間さぁん、コレ、前立腺。せっかくなんでしっかり感じてくださいね〜って、聞こえてます?」 「ッ、ヒ、……や、むり…だッ」 脳天に突き刺すような感覚がビリビリと疾る。 痛いのか、苦しいのか、気持ちいいのか、分からない。もう全部なのかもしれない。 ずっと体の内から湧き上がるような熱があったが、その熱が茹るようだ。ぶくぶくと音を立てて、体全てが熱くなる。ぶくぶくと、意識までが沈みそうだ。 もうこの熱に全て任せてしまおうかと思った瞬間、異物感と気持ち悪いくらいの快感がひいた。 「佐久間さん大丈夫?ブラックアウトしちゃってないですか?」 「…して、いない」 「あー良かった、佐久間さんかわいーからやりすぎちゃった。すみません。解れたから座薬、いれますねー」 頭が回らないからか、彼の言うことがよくわからない。かわいい?誰が?何がだ?頭が回っていても彼の話は分からなかったから、分からないのは当たり前なのかもしれない。 ただ座薬というワードに体が強張った。 「大丈夫ですよー、ローションたっぷりかけたし、指が三本も入ったんだから痛くない痛くなーい、いきますよー」 「…うっ、」 「力、抜いてくださーい?そのほうが楽ですから、ね?」 そう言われてもシーツを握って声を耐えるしかできない私のペニスを彼はゆっくり扱きはじめた。またチカチカと目眩がしそうな快感に強制的に力が入らなくなる。 そしてまた感じる異物感に、私はまたシーツを握ることしかできなくなった。先程とは比べ物にならない。温かみのない無機質なそれは細くとも先程よりも私の奥を無遠慮に拡げていく。確かにローションのおかげか滑らかに入っていくがこちらはたまったものではない。時節、先程触られた気が狂いそうな快感をもたらす場所を掠るそれは唇を噛まなければ声が漏れそうになるほどだ。 「…と、入りましたよぉー。分かります?」 「おわ、りか?」 「名残惜しいんですけど、これから注射して、終わりです」 「はやく、しろっ!」 じろりと、後ろでに彼を見れば幼いと思った彼の顔がまるで舌なめずりをする狼のように見えた。こわい、言い様のない恐怖を、期待を、こんな感覚をこの歳になって感じることになるとは思わなかった。知らないほうが良かったと心の底から考える自分はまだ余裕があるのだろうか。にんまりと笑う彼に背筋がぞくぞくと泡立つ。 「はいはーい。いきますね」 ぐじゅり、ぱつん、なにか弾ける音が、それだけが、鮮明に聞こえた。 「ウ、ァァアア…ッッ!!!」 ビュルルルルルッ 勢いよく放たれたそれは私の奥を目指すように冷たさだけを残していく。私は同時に精を吐き出して、射精後特有のダルさが全身を包んだ。 今まで淡白という言葉がぴったりの自分の性欲が、暴れるように火照るこの感覚をどうしたら良いのか、私にはわからない。 ただ自分の精液が冷たくなっていく気持ち悪さを感じながら、暗闇に導かれるように目を閉じた。お疲れさまでーす、と私の気持ちとは真逆の声を聞きながら。 end?

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