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聖なる夜は、君とふたりで ※

今日は朝から大忙しだった。午前中に待ち合わせてスーパーの開店と同時に店に入り、買い出しを済ませて中岡のアパートに着くと休む間もなく料理を始める。なんたってこの日のために何を作るか悩みに悩んできたんだ。絶対美味いものを作りたい。きっと中岡もそうだろうと思う。料理に関しては絶対妥協しないのが俺たち。食材にも調理方にもこだわって、クリスマスという特別な日に作った特別な料理は心も腹も満たしてくれた。 「ちょっと駅前行ってみない?イルミネーション結構凄いんだよ」 手作りの夕食を食い終わり、予約しておいた有名店のケーキも完食して、中岡にそう提案されて駅まで行ってみることにした。 昼間通ったときには全く気が付かなかったが、駅前はイルミネーションに彩られてすっかりクリスマスモードだ。そして、周りを見るとカップルばかり。大学の最寄り駅だけあって自分と年の近い奴らばかりで、知り合いに会わないか冷や冷やしてしまう。 「なっちゃん見てー!トナカイがいるよ!」 俺の心配をよそに、中岡はイルミネーションに夢中だ。高身長に整った顔、ただでさえ目立つのに大声で俺の名前を呼ぶもんだから慌てて止めに入る。‥まあ、周りは皆イルミネーションと恋人に夢中みたいだからそこまで神経質になることはないのだけれど。 「バカっ!声がでかいんだよお前は!」 「可愛かったからつい‥」 「‥‥あの、さ。俺‥」 中岡と付き合うようになって5ヶ月になるけれど、この関係を打ち明けられているのはごく限られた人物だけで、いまだに恥じらいというか後ろめたさというか‥覚悟ができていない。中岡を好きという気持ちに変わりはないが、それを公にする勇気は今の俺にはまだなかった。 「‥うん、ごめんね」 言葉に詰まっている俺を気遣って、中岡はいつものように優しく笑ってイルミネーションに視線を向けた。 大きなツリーにサンタやトナカイの光るオブジェ、いつもの駅がまるで別世界のように思えて何だか不思議な感覚だ。クリスマスという特別な日が、そんなふうな気持ちにさせるのだろうか。 もう22時を回ったというのに、辺りは相変わらず肩を寄せ合うカップルで溢れている。‥きっと中岡も、こんな風に普通の恋人らしくクリスマスを楽しみたいに違いない。そんな当たり前のことすら叶えてやれない俺は、中岡の隣にいる資格があるのだろうか。いつもあやふやに誤魔化していた疑問がふと目の前に現われると、堪らなく怖くなる。 すると、中岡の視線はイルミネーションではなくて周りのカップル達を追っているように思えてきて、なんとなく気まずくなってしまった。 「そろそろ戻ろっか」 「‥おう」 中岡は今、どんな気持ちなのだろうか。 アパートまでの10分弱の距離、静かな住宅地を歩きながら当たり障りのない会話をぽつぽつと交わす。 「それにしてもカップル多かったねー」 「‥そ、だな」 この話題を振られた途端、曖昧な笑顔を浮かべて視線を逸らすと会話は途切れてしまった。なんとか会話を続けなければとあれこれ考えてはみるものの、こうなると鬱モード全開。口から出たのは謝罪の言葉だった。 「その‥ごめんな」 「なんで謝るの?」 「だって‥普通の恋人みたいに、できなく‥」 言いかけたところで不意に左手を握られ、咄嗟に中岡の方へ視線を向ける。 「ここならもう平気だよね」 「え?」 「周りのカップル、みんなくっついてて羨ましくって!俺も早くなっちゃんと手繋ぎたいーって思ってたんだ」 そう言ってはにかむ中岡の手は、今日もとても温かい。 中岡は俺のわがままを全部叶えてくれる。周りに秘密にしておきたい気持ちも、だけど心の中では独り占めしたいって思っている気持ちも、きっと全部気づいていて、さり気なく叶えてしまう。 ‥だから余計、自分の駄目さ加減に嫌気がさす。 「ここまで我慢したの偉いでしょ」 「自分で言うなよ」 いつものように悪態をついて、中岡の手を躊躇いがちに握り返す。アパートに着くまでの間、寒空で冷えた手は少しも温かくならなかった。 「寒かったでしょ?先にシャワー使ってね」 中岡に促されるままシャワーを借りて浴室を出るとキッチンはすっかり片付いていて、中岡はテレビ番組を見ながら部屋でくつろいでいた。「俺もシャワーしてくる」と言って立ち上がる中岡とポジションを交代し、テレビから流れてくるタレントの笑い声に耳を傾ける。けれどそれは雑音にしか聞こえなくて、早々に電源を切った俺は膝を抱えて小さく丸まりながら相変わらず一人でうだうだと考えてしまうのだった。 「‥ちゃん、なっちゃん」 「ん‥‥あ、」 いつの間にか寝ていたようで、中岡に肩を揺すられて意識が戻る。 「そろそろ横になる?」 中岡の言葉に小さく頷いて、俺はのそのそとベッドに潜り込んだ。 最近はもうすっかり同じベッドで寝るようになったのだが、やはりシングルベッドでは狭くて、向かい合った中岡との距離がぐっと近くなると眠気なんて一瞬で吹っ飛んでしまう。鼓動が速くなるのはいつものことだけれど、その理由は今日は少し違うように思える。 胸の前に置いた手を握られると体が強ばるのが分かった。中岡の顔を見るのが怖くて、顔を上げられない。 「なっちゃん眠い?寝よっか」 心配そうに声を掛けてくれるのが心苦しくて、俺は慌てて首を振る。‥いっそ全部吐き出してしまえば楽になるのかも、な。 「‥俺、面倒くさい奴だろ。自分勝手でわがままで、意地っ張りの天邪鬼。オマケに口悪いしすぐ手も出るし‥ははっ、いいとこなんて一つもねえな。あのさ、もし‥‥俺に愛想尽きたら言ってな。きっと俺、いつまでも気づかないでお前に甘えちまうから。俺は‥お前の重荷にだけはなりたくない」 自分から離れる勇気もなくて、結局答えは全部中岡に委ねてしまう。そういうところがずるくて、大嫌いだ。 「‥お願い、こっち向いて」 中岡の優しい声に観念して、俺は恐る恐る顔を上げる。 「‥なんて顔してんのさ」 「‥‥っ」 ふわりと頬に触れる手は大きくて、伝わってくる温もりに思わず泣きそうになるのをぐっと堪えた。 「緊張するとよく喋るクセは相変わらずだね」 「‥‥」 「もしかして、さっきのこと気にしてるの?『普通の恋人みたいに』ってやつ」 「‥っ、気にするに決まってんだろ!だって‥」 「だって?」 「あっ‥あんなに他のカップルガン見してたら、やっぱりああいう風にしたいのかなとか‥思うじゃん‥。俺はまだそういうこと‥して、やれないから‥」 再び視線を逸らすと中岡のため息が聞こえて、胸がチクリと痛む。‥と、伸びてきた中岡の腕に捕まえられて体を引き寄せられた。触れ合った部分から聞こえてくるいつもより少し速い鼓動はとても心地がよくて、思わず聞き入ってしまったのだが。 「さっきね、他のカップルいっぱい見てて思ったんだ。『なっちゃんはここにいる誰よりも綺麗で、そんななっちゃんは俺の恋人なんだな』って」 「なっ‥に、言って‥」 「でもその行動がなっちゃんを不安にさせちゃったんだね‥本当ごめん」 マイナスな思考は伝染する。抱きしめられる腕に力が入り、心音が一層速くなったところで気がついた。‥そういえば中岡は、俺以上のネガティブマンだった。 自分が原因で作り出してしまったこの重苦しい雰囲気をどうにかしなければと必死に考えるけれど、かける言葉は見つからなくて、代わりに中岡の背中にそっと腕を伸ばした。 しばらく無言の時間が過ぎて、改めて中岡の言葉を思い返す。 「‥つーか、いつも言ってるけど綺麗とか‥」 「もー!いい加減綺麗って言われるのに慣れて!なっちゃんは綺麗で可愛くって俺の天使なの!」 「あ‥はい‥」 あまりの迫力に思わず返事をしてしまったけれど、よくよく考えると恥ずかしい単語の乱れ撃ちで顔から火が出そうだ。赤面している俺の顔をニヤニヤしながら覗き込んできた中岡の額をぺちんと引っ叩いてやると、「いつものなっちゃんだ」と嬉しそうに笑っていたから、「お前もな」と呟きながら俺もつられて笑ってしまった。 「‥そりゃまあ、なっちゃんのこと周りに自慢して堂々といちゃつきたい気持ちもあるよ?けど俺は‥今のままですごく幸せ。だって二人っきりのときはこうやっていっぱいくっつけるもん。自分勝手で全然構わない、むしろどんどん甘えてほしい。俺の前ではわがままななっちゃんでいて」 中岡のまっすぐな言葉は、いまは素直に受け入れられる。思い切って全部吐き出して良かった。 「あ!それに俺、前にも言ったよね?なっちゃんから「別れて」って言われても、絶対別れてあげないんだから!」 「‥お前わがままだな」 「えー!それなっちゃんが言うー?!」 顔を見合わせて、お互い堪らず声を出して笑い合う。それから少し間があいて、先程よりも少しだけ真剣な表情を向ける中岡に応えるように、俺も改めて中岡に視線を送った。 「なっちゃん、俺のこと好き?」 躊躇いがちに無言で頷くと、顔を近づけてきた中岡の額がコツンと当たり、熱っぽく見つめられて。 「じゃあ好きって言って」 「‥‥」 「言うまで待つ!」 「は?いいよ待たなくて‥」 「ご存知の通り、俺もわがままなもので」 「‥ぷっ、そうだった」 「ふふっ。‥ねえ、早く」 「‥‥好き」 「それだけ?」 「‥好き‥‥好きだよ、中岡」 「‥俺も大好き」 そう言って顔を上げた中岡の唇はすぐに俺に届き、伝わってくるその温かい感触に自然と目を閉じる。背中に回った手は優しく、でも力強く俺を包んで離さない。触れ合うだけの唇は次第に強い刺激を求め、中岡が舌でなぞったのを合図に、箍が外れたように貪り合う。熱を帯びた舌を絡ませ合うとすぐに欲情し、もう何も考えられなくなってしまう。合間に漏れる吐息も頬を伝う唾液でさえも興奮剤となり、密着した体は次の快感を求めて無意識に動いていた。 「‥っ、なっちゃん‥今ものすごく‥エッチしたい‥」 「‥‥俺も」 擦り付け合っていた下半身はすっかり勃ち上がり、体は熱くて堪らない。中岡に促されるまま仰向けになると、伸びてきた手に下着ごとスエットを脱がされた。 Tシャツ越しに胸の突起を撫でられると、電気が走ったように体が痺れる。以前は何も感じなかったこの場所が最近ひどく敏感になっているのは、きっと中岡がいつも弄るからだ。自分の淫乱さに腹が立つけれど、シャツを捲りあげられて直に摘まれると体は正直に反応した。手で下半身を扱かれながら突起を吸われると情けない声を漏らしてしまい、慌てて口を押さえた。 中岡はキスを落としながら徐々に下半身へと下りていき、なんの躊躇いもなく俺のものを口に含む。熱くて粘着質な口腔内は、手でされるのとは感覚がまるで違う。強く吸われるとすぐに射精感が襲ってきた。 「や‥‥も、でる‥から‥っ」 髪を引っ張って必死に抵抗すると、中岡はイく寸前で俺を解放してくれた。 息絶え絶えの中、中岡が自身のジャージに手をかけたところで俺は慌ててそれを静止する。少し戸惑いながらこちらに視線を送る中岡に、俺は不器用な笑顔を作ってこう答えた。 「今日は‥俺にもさせて」 今まで俺は、中岡にしてもらうばかりだった。セックスのときは羞恥心に耐えるのに精一杯で何も考えられず、中岡からの愛撫をただ受け入れるしかできなかった。だけどもう、それは終わりにしたい。だって中岡を好きな気持ちに嘘はないから、俺も中岡のためにしてやりたい。せめて二人きりのときは、少し積極的になりたいと思った。 「無理‥しないでね」 「ん‥たぶん、平気」 仰向けになった中岡のジャージを下ろし緩く勃ち上がったものに触れると、びくびくと小さく反応する。俺のなんて比べ物にならなくて、それが少しコンプレックスだったりするんだけれど、正直中岡とのセックスはすごく気持ちがいい。きっと今日も。‥そんなふしだらなことを考えながら、俺は唾液を溜めた口腔内に中岡のものを含んだ。抵抗感はあったがいざしてみるとそんな考えはすぐに吹き飛び、いつもしてもらっているのを思い出してぎこちない手つきで扱きながら顔を上下に動かしてみると、中岡のものはあっという間に硬くなる。俺で感じてくれていると思うと嬉しくて、次第に芽生えてくる支配欲と独占欲に体が疼いた。 「っ‥‥なっちゃん、もういいよ‥」 頬を撫でられる感覚でふと我に返り、俺は含んでいた中岡のものを口から離す。無我夢中だったようで、何だか頭の中がぼーっとする。 「‥よくなかった?」 「‥‥良すぎてこれ以上は無理です‥」 そう言って両手で顔を覆っている姿がおかしくて、思わず吹き出してしまった。汚れた口元を乱雑に手で拭うと、中岡は起き上がって心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。 「大丈夫‥?」 「‥‥まずい」 「ははっ、正直」 ベッと大袈裟に舌を出してみせると、今度は中岡が声を出して笑った。 そのまま押し倒されそうになるのを咄嗟に静止して、おずおずと中岡を見上げる。‥どうしたんだろう俺、フェラで吹っ切れたのかな。今日はもっと‥。 「どうかした?」 「今日は俺が‥う、上で‥」 「‥‥‥‥‥ぜひ」 着ていたTシャツを脱ぐと中岡も同じように脱ぎ捨ててベッドに横になる。「俺がする」という中岡の申し出を断り、俺は膝立ちになってローションを絡めた指を恐る恐る後ろに伸ばした。自分でもまだそんなに触れたことはなくて、羞恥心とローションの冷たさで身震いしてしまう。深く呼吸をして力を抜くと思ったよりも簡単に指を飲み込んでいき、若干の戸惑いを抱きながらゆっくりと指を動かして中を解す。動きはぎこちないし気持ちいいかと言われたら疑問だが、必死に指を動かすと体は異物感で生理的に反応してしまう。 「なっちゃんやばい‥絵面がエッチすぎてやばい‥」 「ん‥なこと、言われても‥っ」 「やっぱり俺もする」 「は、別にいい‥‥っ、ん‥ぁ」 俺の指と重なるようにヌルリと中岡の指が入ってきて、漏れ出た自分の声に驚いて慌てて口を塞ぐ。そんなことはお構いなしに中岡は俺のいいところを容赦なく擦り、徐々に体から力が抜けていくのが分かる。ガクガクと震える膝で体を支えるのに精一杯で、結局は中岡にされるがままだ。 「なっちゃん前も後ろもヌルヌル」 「っ‥や‥、言うな‥っ」 必死に言い返すものの、指を引き抜かれるとその場に力なくへたり込んでしまい情けなさでちょっと凹む。やられっぱなしは嫌だから、俺は覚悟を決めて顔を上げた。 「もういける‥」 「え?え?!あ、ちょっと待‥‥っ!」 もう一度膝立ちになり、中岡のを押し当てて勢いよく腰を下ろすとあまりの衝撃に一瞬飛びかけて、俯いたまま動きが止まる。 「‥あの‥なっちゃん‥へ、平気?」 「‥‥無理‥」 「そ、そしたら一回抜こ‥」 伸びてきた腕を押さえ込んでブンブンと首を降る。視線が合うとバツが悪くて思わず苦笑ってしまった。 こんな気持ちいいのに、抜くとか‥ 「‥無理」 「‥‥今日のなっちゃん、エッチすぎ」 呼吸を整えてゆっくりと腰を前後に動かすと、中岡は目を閉じて小さく息を吐いた。どんな風に動けば気持ちよくなってくれるだろうか、俺は手探りで必死に考える。挿入したまま前後に動くと中岡の大きさと温かさが伝わってきて、時折腰を突き上げるようにすると前側のいいところに当たる。そして上下に弾むように動くと内側全体が擦れる感覚に体が震え、開いたままの口からは甘ったるい喘ぎが零れた。 ‥って、気持ちよくするどころか自分が気持ちよくなってんじゃねえかよ。自分自身にツッコんでみるものの朦朧とする頭ではそれを正常に処理することは不可能で、あんなに嫌いだった厭らしい喘ぎ声すら止めることができなくなっていた。そして体はさらなる刺激を求めて動き続けてしまう。 「もしかして前から上でしたかった?なっちゃんものすごく気持ちよさそう‥」 「は‥あっ、ちが‥っ」 「ここ、繋がってるのがよく見えて興奮する」 「やっ‥あ、あぁっ!」 結合部分を指でなぞられるとゾクゾクと全身痺れる感覚が襲ってきて、掴んだ中岡の腕にぐっと力が入る。射精していないのに時々こんな風に激しい快感に飲まれることがあって、こうなると少しの刺激にも敏感になり困惑してしまうのだが。 「なっちゃんばっかりずるい‥俺ももっと気持ちよくして」 「‥え、なに‥‥っ!」 不意に腰を動かされるとまだ熱の引かない俺の体はその強い刺激で小刻みに震え、快感から逃れようと体を攀じるが脚を掴まれてしまいそれすらも許されない。 「ふ‥っぁ、なんか‥へん‥っ」 「イったばっかりだからかな」 「俺‥っ、出してな‥」 「なっちゃん時々ドライでイってるんだよ」 「は‥なに‥?」 「今のなっちゃんは超敏感ってこと」 下から強く突き上げられて中岡の胸に置いた手にぐっと力が入る。くっきりと残る爪痕からは血が滲んでいるけれど、それでも中岡は動きを止めなくて、俺の中で一層硬くなったものは内側を容赦なく押し広げる。止めどなく溢れ出す粘液は結合部に伝い擦れるたびに湿った水音が耳について嫌になるが、今はそれもまた興奮剤だ。体中が熱くて、疼いて、おかしくなりそう。 「あっ、は‥あ、あ‥ぁっ」 「すごい‥なっちゃんの中ずっとびくびくしてる‥そんなにいいの?」 「‥っ、いい‥‥気持ち、いい‥っ」 「なっちゃんの淫乱‥‥好き」 何を言われても、今は「好き」の一言で何でも許せてしまう。 「はっ‥ぁ、夏生‥っ」 中岡が俺を名前で呼ぶのはスイッチが入った証拠だ。そして俺もまた、そう呼ばれると制御が効かなくなる。いつもより少しだけ低い中岡の声は、俺の思考を完全に麻痺させる。 伸びてきた腕は汗でべとつく体を撫で、胸の突起を弄ぶ。身震いするとそこばかりしつこく攻めてくるから、本当に意地が悪い。 「夏生はどれが好き?キスしながら?ここ弄られながら?それともゆっくり抜き差しするのかな」 「‥‥奥が‥っ、す‥」 「うん、知ってる」 腰を掴まれ力いっぱい引かれると一気に根元まで咥え込み、一番深い場所に当たると目の眩むような快感に思わず悲鳴が上がる。 「夏生、好きだよ」 その言葉に応えたいけれど、口から溢れるのは乱れた呼吸と掠れた喘ぎ声だけで‥それでもそんな俺を見上げる中岡の表情は痛いほど優しくて泣きそうになる。必死に手を伸ばして頬に触れ、体を倒してキスを落とす。舌を伸ばせば唇を薄く開いて受け入れてくれて、その間も中岡は俺の奥を突いて止めない。 愛されてるんだなと感じる。幸せだなと思う。その想いは体を重ねる度に大きくなっていて、これからもずっと変わらないでありたいと願う。 再び強い快感が襲ってきて、温かく力強い腕に包まれながら俺は欲を吐き出す。間もなくして小さな喘ぎが聞こえると、俺を抱きしめる中岡の腕にぐっと力が入った。 力尽きてぐったりと中岡の上に倒れ込んでいると、肌越しに感じるいつもより速い呼吸と心音が心地よくて再び聞き入ってしまう。その間も中岡は俺の頭を撫でてくれて、離れるタイミングを失ってしまった。もう少し、このままでもいいかな。‥そんな風に思って、俺は中岡の首に腕を回した。 「‥お前、セックスのとき人格変わるよな」 「そ、かな?」 「‥無自覚かよ」 「今日のなっちゃんはすごくエッチだった♡」 「‥うるっさい」 「いででで!」 抱きついたまま思いっきり髪を引っ張ってやると、中岡は情けない声を上げた。 「あーあ、明後日からなっちゃんにしばらく会えなくなるの寂しい」 「1週間ちょっとだろ」 「ほぼ2週間だよ!俺も実家帰るのやめようかなぁ」 「それは帰れ。しばらく帰ってないんだろ?」 「うん‥なっちゃん浮気しないでね!!」 「しねえよバーカ。先風呂借りんぞ」 「えー!一緒に入ろうよー!」 「やだよ」 重い体を起き上がらせてベッドを降りたところでふと足を止める。 「あ、そう言えば」 「ん?」 「ドライって何だ?」 「‥お風呂でゆっくり教えてあげる」 このあと風呂場で2回戦が始まったのは言うまでもない。 今日はクリスマス。プレゼントなんてなにもいらないから、せめて今夜は二人きりで聖なる夜を過ごしましょうか。 おわり

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