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Irrésistiblement ※

俺の在席する農学部食品栄養学科は、3年になると外部施設での実習が行われる。場所は病院や学校、福祉施設と様々で、多方面から管理栄養士の役割と責任を理解するのが目的だ。 夏休みが明けてすぐに始まった3回目の臨地実習は、3週間と少々長い。その間、もちろん遊んでなんていられない。実習自体も割とハードなんだけど、毎日書かなければいけない実習ノートに俺は毎晩頭を悩ませた。 久しぶりにバイトのない生活、そしてなっちゃんに会えない日々。実習中は電話もしないってお互い決めて、メッセージのやり取りだけにしたんだけど、実習が終わる頃には正直色々溜まっていた。声が聞きたい、顔が見たい、そしてたくさんたくさん抱きしめたい。 長い実習生活が終わり久しぶりに大学へ行く。ゼミ仲間や友人にはやたら会うのに、一番会いたい人にはなかなか会わせてくれないなんて、神様もとんだ意地悪だ。こんな日に限ってスマホを家に置いてくるという失態を犯す俺も俺だけど。 あっという間に昼が過ぎ、残りあと1限という絶望感が漂い始めたところでやっとなっちゃんの姿を見つけた。約1ヶ月ぶりの再会、ときめき度120%。しかしいざ駆け寄って声をかけようとすると、どういう訳か声が出ない。‥もしかして俺、緊張してる? 「な、なっちゃん!」 若干上ずった声で名前を呼ぶと、驚いた顔で振り返ったなっちゃんは 「あ‥お、う」 そう言ったきり、後ろを向いて立ち去ろうとする。なんか‥あまりにも素っ気なくて寂しい。慌てて手を掴んで引き止めると、再び振り返ったその顔は少し赤くて‥ああそうか、きっとなっちゃんも俺と同じなんだなと思ってニヤけてしまった。 「なっちゃん今日はもう帰り?」 「そう、だけど‥」 「俺あと1限あるんだけどさ、あの‥‥あとでアパート行ってもいい、かな?」 たどたどしくそう言う俺を少し困ったような表情で見上げたなっちゃんは、しばらく考えてから小さく頷いた。 講義が終わって一目散に家に帰り、身だしなみを整えてなっちゃんのアパートまでバイクを飛ばす。電車とバイクでは10分くらいの差しかないからいつもは電車で行くことが多いんだけど、今日はその10分さえも惜しくて。 バイクを停めて錆びついた外階段を駆け上がっていると再び緊張が走り、インターホンを押す手が震える。超情けない。ビーッと昔ながらのチャイム音が響くが返事はなくて、少ししてなっちゃんがドアを開けてくれた。部屋はいつもつけている香水の匂いが微かに香っていて、築30年のオンボロアパートとのギャップに毎回妙にドキドキしてしまうんだ。 ドアを閉めると、そこは俺となっちゃん二人きりの空間。そう思ったらもう我慢できなくて、気がつくとなっちゃんを後ろから力いっぱい抱きしめていた。なっちゃんの体は温かくて、それで今日もすごくいい匂い。 「優す‥」 振り返って俺を見上げるなっちゃんはとても艶っぽくて、堪らず目の前にある唇をキスで塞ぐ。その柔らかな感触を思い出してしまったら、誰が止めることができようか。 首だけ後ろに向けたなっちゃんの唇を吸うように何度もキスをする。わざと音を立てて羞恥心を煽ってやると、理性は思ったよりも早く吹き飛んだようだ。薄く開いた唇から覗く舌に誘われて一気に唇を塞いで舌を差し込む。 なっちゃんも気持ちが高まっているのか、途中俺の方に向き直って必死に舌を絡めてくれた。相変わらずぎこちなくてちょっぴり下手くそだけど、そこが堪らなくいい。 キスだけで十分に反応した下半身を擦りつけながら、上手く呼吸ができず酸欠でふらつくなっちゃんを押し倒し、それでもキスをやめない俺の頭を、なっちゃんはペチンと叩く。 「靴くらい脱げよ」 そう言って呆れながら照れ笑うなっちゃんは本当に可愛い。言葉通り、俺は靴だけ脱いで再びなっちゃんに絡みついた。玄関入ってすぐだなんて、普段ならきっとすごく怒るだろうけど、今日はなっちゃんもそんな余裕はないみたいだ。 頬に触れると小さく震える。なっちゃんの柔らかい頬が大好きで、俺はいつもしつこいくらいに撫でてしまう。“あまり笑わない人は頬が柔らかい”とどこかで聞いたことがある。なっちゃんにはたくさん笑ってほしいけれど、この頬の柔らかさはなくならないでほしい‥なんて思うのは我儘だろうか。 頬を撫でながら首筋に顔を埋めると、香水の強い香りがした。柑橘系の爽やかでほのかに甘い香りはなっちゃんにとても似合っている。もしかして俺が来るから準備してくれていたのかな?今日はいつもより香りが濃くて、それさえも興奮要素になる。 首筋にキスを落とし、頬を撫でる手を徐々に下へと移動させていく。10月に入ったがまだ薄着で過ごせるこの季節。長袖Tシャツ1枚とジーパンのなっちゃんは服の上からでも体のラインがよくわかり、胸の突起はすぐに見つけられた。指で触れるとピクリと反応し、俺はTシャツ越しに口で愛撫する。 「‥っ、それ‥やめ‥」 「直接がいいってこと?」 「は?!ちが‥っ、ん‥」 シャツを捲りあげて直に舌を這わすとビクンと体が跳ねた。最初は全く反応がなかったこの場所も、最近は素直に感じてくれるようになったみたい。これも俺の日々の努力の賜物‥諦めないで良かった‥!舌で転がして、唇で甘噛みして、そして軽く吸い上げる。その度になっちゃんの体は小さく震え、時折漏れてくる普段より少し高めで熱を帯びた声は容赦なく欲情を煽り、俺は夢中で貪った。 「おっ‥前、しつこいんだよ‥っ!」 持ち前の口悪さで静止され、力任せに引っ剥がされた俺は不満たらたらだ。‥だから、しっかり反応しているなっちゃんの下半身を見たら、もっと意地悪したくなってしまった。 「そんなこと言って‥早くこっち、してほしいんでしょ」 「っ、あ‥」 ジーンズ越しに硬くなった下半身を刺激すると、なっちゃんの唇からは吐息混じりの甘い声が漏れる。 「すごいガチガチだ。いま楽にしてあげる」 ファスナーに手をかけて下着ごと一気に足首まで下ろすと、なっちゃんは咄嗟に手で顔を隠して視線を反らした。その表情が何だか泣きそうに見えたから、俺は急に不安に襲われる。どうしよう‥意地悪しすぎちゃったかな‥? ‥人間、パニックに陥っているときほど奇怪な行動をするもので。 「おっ‥‥俺もだからっっ!」 慌てた俺は何を思ったか、自分のズボンとパンツを勢いよく下ろし、痛いくらいに勃ち上がったモノを指さして大声で叫んでいた。膝立ちで下半身丸出しの姿は超マヌケで、相変わらず攻めきれていないなと自分でもつくづく思う。 その様子がよっぽどおかしかったのか、一瞬キョトンとして今度は声を上げて笑うなっちゃん。不本意だけど‥可愛い。 「も、もー!そんなに笑わないでよっ」 「あははっ、悪い悪い。なんか‥‥久々に会ったから、ちょっと緊張してた」 見つめ合って、笑い合って、同じ気持ちなんだとわかり合う。それがどんなに嬉しいことか。 「‥実は俺も」 「たかが1ヶ月会わなかっただけなのにな」 「されど1ヶ月だよ!俺今日、大学でなっちゃん見つけたとき超〜ときめいちゃったもん。『うわっ、やっぱ可愛いー』って!」 「‥バカだ」 「うわ、ひっど!それだけなっちゃんに会いたかったの!」 呆れたように笑う顔もまた愛おしい。 「でも‥俺もお前のこと言えねえや」 「ん?」 「お前の顔見たら、その‥『やっぱ好きだわ』って思ったから」 なっちゃんの“好き”はすごく特別だ。普段はいつも恥ずかしがって俺が何度聞いてもはぐらかされてしまうその言葉を、今はこんなにも素直に伝えてくれる。 「俺も会いたかった」 そう言って頬に触れる手は温かくて、優しくて、まっすぐな瞳は確かに俺を見てくれて。その嬉しすぎる事実に俺の心は幸せで溢れる。離れて、改めて大切さに気づく。なっちゃんの存在が、俺の中でどれだけ大きいかということを。 「なっちゃんはほんとツンデレだ。‥好き」 「ははっ、それじゃあお前は‥デレデレだな。いつも締まりのない顔してるし」 「失礼な!普段は男前ですー」 「自分で言うのかよ、ソレ」 「デレデレなのはなっちゃんの前だけだからね!」 「ははっ、でなきゃ困る」 「‥‥」 「‥なんだよ」 「‥今日のなっちゃん、超素直」 「普段は素直じゃなくて悪かったな」 両手でむにっと頬をつねられ痛がっていると、不意にその手で優しく包まれる。 「素直ついでにひとつ言ってもいいか?」 「なーに?」 「‥早く、続きがしたい」 そう言ったなっちゃんの表情は、俺史上3本の指に入るエロ可愛さだった。 「ねえ‥‥もう‥このままここでしてもいい?」 「‥は?!ちょっ、部屋まで我慢しろよ」 「誰のせいで我慢できなくなったと思ってんのさ!それに、早くしたいって言ったのなっちゃんだよ?‥いいよね」 「‥‥っ」 平常を取り戻していた下半身はものの見事に最大値まで復活していた。約1ヶ月お預けだったんだ、もうこれ以上我慢なんてできない。剥き出しになったままのものを重ねて擦り合わせると、ドクドクと脈打つのが直に伝わってくる。 「なっちゃんの可愛い」 「‥っ、気にしてんだから言うなバケモノ」 「ぶっ‥バケモノって‥最高の褒め言葉」 「‥褒めてねえっつーの」 俺の手を包むようになっちゃんの手が重なってきたのに驚いて、そっぽを向いている顔を覗き込む。目が合って、恥ずかしそうに照れ笑うなっちゃんに股間は正直に反応した。 エッチのスイッチが入ると、なっちゃんはいつもの3割増で色っぽい。以前は必死に隠していた声も、表情も、今はだいぶ曝け出してくれるようになったから、前よりもずっとずっとなっちゃんとのセックスが好きになった。 久しぶりなせいか少し扱いただけで先走りが溢れ、重なり合う手を伝う。濡れて滑りがよくなると感度も格段に上がり、わざとゆっくり上下したり先端を擦り合わせたりして、自分の、そしてなっちゃんの気持ちいいところを探る。 なっちゃんの顔を見ていたらもっと気持ちよくしてあげたくなって、俺は扱いている手を離しゆっくりと頭を下げてなっちゃんのものを口に含んだ。口の中に広がる精液の独特な甘みは、俺の理性を完全に吹き飛ばす。髪を引っ張るなっちゃんの必死の抵抗を無視して夢中で吸い上げると、程なくして小さく震え、口腔内に生温かさが広がった。 顔を離して精液を飲み込むと、なっちゃんに無言で殴られた。耳まで真っ赤にして、本当に可愛いくて‥どうしようもないくらい、大好き。 もう一度下半身に顔を埋め、今度は脚を持ち上げてキスを落としながら徐々に奥へと進んでいく。たっぷりと唾液を纏わせた舌を敏感な部分に押し当てると、なっちゃんは慌てて俺の頭を引っ剥がした。 「な‥っ、そこ‥汚え‥」 「そんなことないよ」 そう言って秘部に軽く口づけると、なっちゃんは観念したように固く目を閉じた。 周囲を解すように舌全体を這わせ、徐々に中へと入れていく。一度イって感度の増したなっちゃんの体は少しの刺激でも過剰に反応して、舌先をほんの少し進めただけでビクビクと震えて甘い喘ぎを溢す。なっちゃんは「女みたいで嫌だ」と言うけれど、俺はなっちゃんのエッチな声が堪らなく好きだから、もっとたくさん、聞きたいって思う。内壁を舌でなぞるときゅっと締め付けられる。柔らかくて温かいこの場所に、早く入って繋がりたい。 「ごめん、今日はこのまま入れさせて‥」 「っ、んな顔されたら‥断れねえだろ‥」 「‥うん、ごめんね」 爆発寸前の自身を握り、十分解した入り口に押し当てる。溢れ出る先走りでぬめった先端を擦りつけながら押し込むと、なっちゃんの体は少し抵抗した後、俺を優しく受け入れてくれた。先端部が入り、ゆるゆると徐々に飲み込まれていく感覚はとても不思議で、気持ちよくて、なんの隔たりもない直に伝わってくる体温に思わず嬌声が漏れてしまう。 「なっちゃんの中、すごくあったかい‥」 根元まで入れる勇気がなくて、躊躇いがちに腰を前後に動かすと、咄嗟に腕を掴まれた。 「気持ちいい?」 「は‥ぁっ、‥ぜ、全部‥入れ、て‥」 ‥なっちゃんにはお見通しだったみたい。要求通り根元までゆっくり押し込むと、なっちゃんは快感に抗うように体を小さく丸めた。力いっぱい掴まれた腕の痛みと内側の締め付けに必死に耐えながら、一番奥を突いてあげる。動きに合わせて漏れる声や息遣いに欲情してつい乱暴になってしまいそうなのを、僅かな理性で押し留める。 「ここ、なっちゃんの好きなとこ」 「あっあ‥ぁ、ん‥そこ‥いい‥っ」 なっちゃんの気持ち良さそうな顔を見ていたら、なんかもう‥バケモノで良かったって思った。 不意に伸びてきた手に背中を捕まえられて驚く。こんな風になっちゃんのほうから抱きしめてくるのは珍しかったから。 「なっちゃんどうしたの?」 「‥名前、呼んで‥ほしい‥」 ‥そんなに可愛くおねだりされたら、断るなんてできないよ。 ありったけの力を込めて抱きしめ返し、耳元で囁く愛しい恋人の名前。 「‥夏生」 「う‥っ、あ‥やば‥っ」 「何度でも呼んであげるよ、夏生」 きつく締め付けられてイきそうになるのをぐっと耐えて、何度も何度も名前を呼ぶ。普段とは違う、セックスの時だけの特別な呼び方。 「‥っ、夏生‥夏生、好き、大好きだよ」 「あっ‥ぁ、優介‥‥俺も、好き」 なっちゃんの“好き”は特別だ。それが1日に2回も聞けるなんて‥もう死んでもいい。‥いや、絶対死ねない。 もっと繋がって、愛して、感じたい。この時がずっと続けばいいのにといつも思いながら、心と体は裏腹で、いつしか夢中で腰を振る。そして何度目か分からない締め付けに限界を迎えた俺は、なっちゃんの中に欲を放つ。乱れた自分の呼吸に気付いて後悔の念に駆られるけれど、ふと目が合い、笑いかけてくれるその優しい表情に安堵して、俺はいつもの俺に戻れるんだ。 なっちゃんの中から自身を引き抜くと、同時に白濁が流れ出てきて思わず顔面蒼白。そうだ‥この事をすっかり忘れていた‥。 「っ‥最悪‥」 「ご、ごめんね‥やっぱ嫌だったよね‥」 「違う‥‥すげー‥よすぎて‥‥あーもう最悪‥」 「‥‥ぷっ、あはは!俺も、すげーよかった」 「けどもうしねえ!‥そ、そんなには‥」 「ふふっ、‥うん」 キッチン横の棚からタオルを拝借してなっちゃんにも手渡す。気だるげに起き上がって体を拭きながら、なっちゃんは伏し目がちに呟く。 「俺‥このままじゃ駄目な人間になりそう」 「なんで?」 「‥時々頭ん中、エロいことだらけになるときがある」 「大丈夫、むしろなっちゃんがエッチなの大歓迎だし、俺は時々じゃなくて常に頭ん中どエロいことだらけだから!」 「‥それは‥どうなんだよ」 盛大なジト目さえも可愛いと思ってしまう。もう俺は、いつだってなっちゃんのとりこ。 「あ!そうだ!」 「なに?」 「実習お疲れ様」 「‥タイミングおかしいだろ」 「だって、すっかり言い忘れてたから」 「ははっ、そうだな。‥お疲れ様」 明日からまた、いつも通りの日々が始まる。 それはなっちゃんに会える、幸せな日々。 おわり

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