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第4話

「ふうん……。顎、触ってもいいか?」 「別にいいけど」 俺が答えると志乃は足を止め、俺の顎をじっと見詰めて手を伸ばす。 繊細そうな細い指先が俺の顎にそっと触れ、びりっと電気が走ったかのように俺は肩を強張らせる。 その指が羽のようなタッチで何度か顎と頬をするすると撫で、今度はくすぐったくて肩を縮めた。 「ちょっ、くすぐったいって」 「わ、少しじょりじょりしてる。すげーな健司」 「志乃、言葉遣い。最近学校の奴らに感化され過ぎだぞ。日に日に言葉遣いが悪くなる。怒られるのは俺なんだからな」 日頃は使わない言葉も俺と外で2人きりになると使うようになった。 それを咎めるも志乃はそんなのどこ吹く風で、急に辺りをきょろきょろし出す。 「そんなの大したことじゃないだろ別に。それより健司に見てもらいたいことがあるんだ。誰にも見られない所がいいんだけど……」 「どうしたんだ急に。家じゃ話せないような内容?」 「うん……」 心なしか志乃の表情が曇る。 「ちょっと来てくれ」 珍しく志乃が俺の手を引いて、真横の公園へ歩いていく。 志乃が迷いなく向かう先は公園のトイレだった。 「志乃、志乃様!このような所を使わずとも、もっと綺麗な場所に行かれてはどうですか!」 「外でその敬語はやめろって!それより緊急事態なんだ。家じゃ相談できないことだし。な、頼む」 「えー……」 強引に連れまわされることはこれまでだって度々あったけれど、どうしてまた公園のトイレだなんて。 俺としては緊急性のない限り、公園のトイレなんて志乃には使ってほしくない。 志乃はつんと匂いのするトイレの個室ドアを開けると俺に入れと促した。 「何ですか……。こんなところで……」

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