51 / 140

第1章第50話

抱きついた僕を優しく包むように 抱きしめ汗でくっついた 前髪を掻き分けると 瞼にキスを落とされた。 「身体大丈夫か?」 僕は今更恥ずかしくなり 赤くなりながらこくりと頷くと 蒼空は微笑み 「お風呂入ろうか」 そう言って僕を抱き抱えると お風呂場まで連れて行く。 蒼空は僕に何かを訊く気配もなく 優しく身体を洗ってくれ 汚れた身体を綺麗にすると お風呂から上がり 僕は蒼空が出してくれた 大きな服を着てリビングに戻った。 「喉乾いたろ?何飲む?」 「……なんでも」 少しだけぎこちない会話。 だけど、空気感はとても穏やかだった。 ソファに座ると 丸まって寝ていた子猫が目を覚まし ミャーと僕に擦り寄る。 「あ、名前決めないとな」 蒼空はそう言うと 暖かなココアを持って 僕の隣に腰を下ろすと 僕に手渡した。 「……有難う」 僕はマグカップを受け取ると、 フーフーと冷まして口に運ぶ。 「名前何がいい?」 蒼空は子猫を撫でながら、 優しい眼差しを僕に向ける。 「……飼ってくれるの?」 「捨てられないだろ? こいつも必死に生きてるんだ。 それに……ここに来たのはきっと 偶然じゃない!朝陽と出会えたのも 俺にはちゃんと意味がある」 蒼空の言葉に 僕の胸はキュンと締め付けられた。 出会ったのは昨日の事……。 それでも、この人は僕を愛してくれた。 僕も……この人の側にいたい。 だから…………。 僕はカップをテーブルに置くと 蒼空の唇にそっとキスをする。 「……朝陽?」 僕の行動にビックリした表情を浮かべる。 「僕も……蒼空が好き……、 だから……側にいさせて」 涙が零れそうなのを必死に堪える。 子猫は心配そうに僕に擦り寄り ミャーと鳴いた。 蒼空は子猫を抱きそのまま 僕も一緒に抱きしめた。 「お前が望むなら……いくらでも。 勿論お前もな」 蒼空は僕と子猫を優しく撫で もう一度ぎゅっと抱きしめてくれた。 神様……他には何も望まない。 だからこの人と……子猫と過ごす 時間だけは……どうか奪わないで下さい。 どうか……それだけは………。

ともだちにシェアしよう!