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第1章第54話
「もしもし?」
「よっ上条!」
電話は芹沢先輩だった。
「どうしたんですか?」
「どうしたって、あれから
どうなったか心配してたんだけど?」
あっ…………そうだった。
早退出来たのも先輩のお陰だった。
「す、すいません、先輩のお陰で
ちゃんと話できました」
申し訳なそうに俺が言うと
先輩はまるで自分の事のように
喜んでくれてこう言った。
「なら良かった……。
事情は訊かないけど大丈夫なんだな?」
「はい……有難うございます先輩」
顔はお互い見えないけどきっと笑顔だ。
「あのさ上条
その先輩ってのやめない?
まあ会社じゃあれだけど
俺は名前のが……」
「え?……じゃあ、芹沢さん」
「ん~要 のがいいな」
か、要!下の名前かよ!
なんか恥ずかしい。
「か、か、要さん」
俺が思いっきり
恥ずかしがりながら呼ぶと、
先輩は笑いながら言った。
「それでいい!まだ一緒にいるんだろ?
悪いから切るよ……あ、でもなんかあれば
言ってこい!力になるから」
本当にこの人は優しい先輩だ。
でもやっぱ男とって言ったら引くかな?
「分かりました……有難うございます
それじゃあまた」
「おう、じゃあな!」
同時に電話を切り俺はリビングに戻る。
朝陽は穏やかな表情で眠っていた。
父親……ちゃんと話さないと。
守ってやらなきゃ!
俺は起こさぬよう軽くキスをした。
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