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第1章第67話
蒼空side
朝陽が父親に連絡を入れた頃
俺は呑気に昼休み。
屋上に出ると
先に芹沢先輩がいた。
「よっ、お疲れさん」
そう言って先輩は
缶コーヒをくれた。
「有難うございます先輩」
俺は何気なく隣に座り
持って来た弁当を広げる。
「相変わず自炊か!
本当すげーな!あ、それと
先輩じゃなくて要だからな!」
俺はその意味が未だに分からない。
「あの、せ……要さん、
俺大事な子いるんですけど」
防御しないと踏み込まれたら
困る!朝陽がいるんだし!
「ん?あ〜」
目を丸くしたと思ったら
腹抱えて笑い出した。
「ちょ、要さん?」
「お前、俺がもしかして
狙ってるとか思った?」
えっ────じゃあ
どう言う意味だよ!
「あのさ、俺はお前の事
出来のいい可愛い弟みたいって
思ってるだけだよ」
笑いながらそう言われて
俺の顔は火を吹きそうだ。
誤魔化す為に俺は弁当に食いつく。
「それよりその大事な子は?
あ、俺……差別とかする気ないから!
この間話した子だろ?」
本当にこの人は────
でも、頼れる先輩がいるのは悪くない。
俺は上手く朝陽のプライバシーを
守りつつ話した。
「………………なるほどな、
そりゃ傷つくぜ!
まだ思春期だろ?
俺なら間違いなくグレるか
死にたいって思うかも」
────そうだよな。
俺でも生きているのは辛いと思う。
朝陽がどんな思いであの左手首に
刃物を宛がったのか────。
想像するだけで胸が張り裂けそうだ。
「とにかくさお前が大事だって
思ってんなら全力で守ってやれ」
「要さん…………」
「今その子が頼れんのは
お前だけだろ?なら
最後まで責任持てよ!」
勿論だ!投げ出すつもりなんか
微塵もない!
これ以上朝陽を傷つけるのは
絶対嫌だ!
「俺に出来る事あるなら
協力するからさ!」
先輩は爽やかに微笑むと
俺の肩を軽く叩いた。
「有難うございます」
「おう、無理すんなよ!
相談ならいつでも乗ってやる!」
本当にこの人は実の兄みたいだ!
俺はにっこり微笑むと
弁当を掻き込んで
昼休みが終わった。
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