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第2章第74話
暫くの沈黙。
ピリピリした空気感。
どこか一条さんの
眼差しが険しくなった
ように思えたのは
僕の気の所為ではなかった。
「じゃあ、朝陽はどうするつもり?
まだ独り暮らしなんて出来ないだろ?
責任も取れるような歳じゃない」
さっきまで君付けだったのに
それもなくなり荒々しい口調。
紳士的なイメージが崩れた。
怖い────、
正直そう思ったけど
その豹変に僕は
余計にこの人と
いられないと自覚した。
「僕は蒼空と暮らす!
義務で引き取られたくない!」
僕は思わず声を荒らげた。
だけど────、
「彼と?他人の?
彼には暮らす理由がないだろ!
他人を巻き込んではいけないよ」
「……………………」
僕は拳を握り反論する。
「蒼空は他人じゃない!
僕はこの人愛してる!
何も知らない貴方より
ずっと僕を理解して
大事にしてくれるんだから!」
僕の言葉に一条さんは
目を見開いた。
でも────、
「愛してる?彼は男だ!
正気か?男同士で気持ちが悪い」
その言葉に僕は言葉を失い
愕然とした。
そう…………なんだ。
やっぱりこの人は
理解する気なんて
最初から────
最初からないんだ。
僕は力が抜けたように
足元から崩れ
ソファに座り込んだ。
気がつけば
僕の目からは涙が溢れていた。
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