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第2章第84話

蒼空side 朝陽は電話で言っていた通り 夕方には帰宅した。 だけどなんだかもじもじしてる。 「どうした?」 「あ、あの蒼空……」 何かを言いかけて俯く。 俺は顔を覗き込んで頭を撫でた。 「なんでも話して? 怒ったりしないから」 朝陽はふーと息を吐くと 強い眼差しでこちらを見た。 その目が俺をドキッとさせる。 「…………あのね今更なんだけど、 お父さんの位牌と遺影を 飾りたいの……駄目かな……」 朝陽の言葉に俺は驚いたけど 自然と笑顔になる。 「駄目な理由がない、飾ろ? あそこの棚使いな」 リビングにある本棚の上を 指差しながら俺はもう一度 頭を撫でた。 本当ならきちんと仏壇に備える べきなんだろうが流石に家にはない。 「有難う蒼空」 朝陽は鞄から取り出すと 腰ほどの高さにある 本棚の上に大事な位牌と 遺影を飾った。 本当に優しい子────。 「朝陽、明日休みだから 約束の動物園行こうか」 正座して手を合わせていた 朝陽はこちらを向いて目を輝かせる。 「行きたい」 俺が両手を広げおいでと 呼び寄せたら朝陽は胸元に 飛び込んで来た。 汚れない朝陽の心が 俺を照らしてくれる。 大丈夫────乗り越えてみせる。 だからもっとその笑顔を隣で見せて。

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