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第2章第89話
久しぶりに気分がいい。
変わって頑張るんだ。
そんな気持ちで道を急ぐ。
まずバイトして
定時制でもいいから
高校をきちんと出て働く。
料理も勉強して蒼空を
楽にしてあげないと。
その為には髪をきちんとしなきゃ!!
街中の交差点は信号が赤を示す。
蒼空はどんな顔をする?
どんな反応してくれる?
喜んでくれるかな?
僕の中にはワクワクした
気持ちが溢れてきて
じっとしていれない。
人混みが嫌いだったのに
そんな事すら気にならない。
そんなワクワクした気持ちで
ふと視線の先に心愛ぐらいの
子猫がちょこちょこと歩いてる
姿が視界に入る。
瞬間子猫が車道に飛び出した。
「あっ────────」
僕は無意識に子猫の元へと
身を乗り出す。
これからの事で周りが
見えていなかったのかもしれない。
ただ子猫が危ないそんな気がしたんだ。
僕はミャーと鳴く子猫を抱くと
激しいクラクションと
音ともに空が一瞬近くに感じた。
バンと激しい音ともに
身体に衝撃が走る。
「ね……こ…………ね…………」
はっきり見えない視界の中で
子猫がミャーと走って行く。
良かった────助かった。
「きゃ────────」
誰かの悲鳴、自分に何が起きたのか
分からない…………身体が痛い────、
動かせない────どうして?
「誰か救急車っ!子供が引かれた」
なに────────僕?
消えてく音と意識の中で
はっきり見えたのは蒼空の顔。
蒼空────────。
必死に伸ばしているはずの手が
動かない────。
「そ………………ら………………」
僕は自分に起きた事実が
分からぬままその場で
意識を手放した。
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