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第2章第90話
蒼空side
仕事中に鳴った着信。
いつも通り出た
その電話に俺は氷ついた。
相手が通話を切った瞬間
俺の手は力を無くし
スマホが床に零れ落ちた。
「……………………」
暖房で少し熱かった顔から
急激に熱が引いていく。
俺はその場で目眩に近い感覚を
覚えふらついたが
心配そうな要さんが支えた。
彼が何かを言っているのに
俺にはまるで届かない。
頭に流れるのは
警察からの電話────。
俺はようやく意識がはっきりすると
説明もしないでオフィスを飛び出した。
「上条っ!?」
要さんが俺を呼ぶ声、
だが止まることなんて出来ない。
俺はタクシーを拾う余裕すらなく
総合病院へと走った…………。
「…………あさ……ひっ……」
現実なのか悪夢なのか
頭は何も浮かばない。
だが、目の前にチラつく
朝陽の笑顔が消えていく。
守ると誓ったのに────、
大事なものが手をすり抜けていく。
お願いだ俺から奪っていくな────。
何を奪われてもいい
朝陽だけはどこにも
連れていかないでくれ。
第2章〜完〜
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