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第3章第93話

朝陽side 僕は目を開けた。 しかし見えたのは 僅かな光だけ。 誰かが何かを言っている 声はするのだけど、 何を言っているのか分からない。 頭がボーッとする。 なんだか酷く眠い。 そんな日が暫く続き 意識が少しはっきりして 見えたのは蒼空…………。 だけどその姿は僕が 知っている蒼空と少し 雰囲気が違うのは何故? それが分かったのは どれくらい経ってからなのか 僕は知らない。 「朝陽?わかる?」 僕はようやく意識を保ち 蒼空の声に身体を起こそうと 試みたが全く動かない。 そればかりか蒼空は 駄目だ!と必死の形相で制止する。 真っ白な空間。 天井も視界に入るものは白で 自分がどけにいるのか不安になった。 「大丈夫病院だよ」 蒼空の言葉で理解する。 頭の近くには心拍数などが 表示されたモニターがあり 棚には花が飾られている。 僕は一体────、 戸惑ったのが分かったのか 蒼空は泣きそうな顔で言った。 「事故に遭ったんだよ……覚えてない?」 事故────まるで遠い記憶を 辿るように思い出す。 「………………」 猫、猫は?そう言うはずだった。 けれど声は全く音にならず 口を動かすのがやっと。 「朝陽落ち着いて訊いて」 僕はあからさまに不安な顔になる。 「あの日、朝陽がどこへ行こうと したのか分からない……ただ、 あの日朝陽は事故に遭って それから────もう二年経つ」 二年!?蒼空の言葉に 頭は混乱するけど そうじゃないと説明がつかない。 僕の目の前にある蒼空の 雰囲気が少し違って見えるのも 髪型が違うように見えるのも────。 変わろうと飛び出した日から 二年────僕は愕然とした。

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