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第3章第95話

病室に漏れる僅かな嗚咽。 俺は朝陽の傍らで 足元から崩れ落ちた。 「ひっく……っん」 これでは朝陽を起こしてしまう。 俺は必死に口を抑える。 でも──── 涙は溢れるばかりで 床にいくつもの雫が こぼれ落ちた。 「上条?」 背後からの突然の声に 俺は肩を震わせた。 「大丈夫か?」 声の主は要さん。 この二年俺を支えてくれた。 「っ……すい……ません」 慌てて涙を拭いかけた 俺を要さんは強く抱きしめた。 「か……め……さん」 もう涙声で名前すら まともに発音できない俺。 要さんは俺を強く抱きしめると 優しく言った。 「今は泣けよ……、 お前は頑張った! それから……良かったな」 要さんは俺の頭を優しく 撫でながら僅かに朝陽に 視線を向けると優しく微笑んだ。 シンプルな言葉だけど 俺には充分重みのある言葉。 要さんが支えてくれなければ、 きっとこの二年は乗り切れなかった。 俺は暫く要さんの 胸で泣いてようやく 落ち着きを取り戻した。

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