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第3章第96話

あの日────、 急いで病院に駆けつけた俺は 手術室の前で何も出来ず たたただ泣くことしか 出来なかった。 数時間にも及ぶ手術が 終わり、傷だらけの 朝陽に会えたのは ICUに運ばれるまでの 僅かな間だった。 俺は泣き叫ぶように 名前を呼んでいたけど 朝陽は全く動かない。 俺が冷静になれないまま 担当医に突きつけられたのは 厳しい現実。 このまま意識が戻らない 可能性────、 戻ったとしても後遺症が 残る可能性が高く それがいつになるかは 分からないと言われ 最悪植物状態になる事を 告げられた。 受け止めきれない現実と 何もしてやれない無力感に 俺は絶望した。 俺は流れる涙も拭わず 抜け殻みたいにガラス一枚 隔て機械やら管を付けられ 横たわる朝陽を眺める。 どれくらい時間が経過したのか マナーモードにすら していないスマホが鳴り響き 半分意識なく出た相手は 要さんだった。 この時何を言ったかは 覚えていない。 ただ病院にいる事を告げた 俺を心配して、 急いで駆けつけてくれた要さんの 姿に俺は今日と同じように 泣き崩れたんだ。 あれから今日までずっと俺を 励ましながら朝陽の 回復を信じてやってきた。 先輩の存在がなければ 俺は諦めていたかもしれない。 今この時があるのは この人のおかげ。 俺は何度も頭を下げ 感謝の言葉を口にした。 要さんはそんな俺に 優しく微笑んで一言。 「本当に良かったな」 その言葉は俺の胸に 深く深く刻み込まれた。

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