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第3章第98話
朝陽side
声が僅かに出るように
なってから蒼空に
先輩を紹介された。
最初は蒼空に新しい
人が出来たのかと不安に
なったけど……考えすぎた
ようで安心する。
意識が戻って気になってた事、
なんとか声に絞り出したら
無事だと分かってホッとする。
だけど蒼空は泣きそう……。
なんでそんな顔をするの?
「朝陽……あのね……」
蒼空の声が震えている。
それが自分の事を示して
いる事は嫌でも理解出来た。
「…………」
悪い事なのか……。
唯でさえ迷惑を
かけてしまっているのに
これ以上蒼空に負担を
かけたくない。
「朝陽?迷惑かけたくないとか
そんな風に考えてるならやめてね」
でも────、
「俺の中ではこの二年で
気持ちは固まってるの、
朝陽が嫌だって言ったって
俺が朝陽の側にいるって
決めたんだから……朝陽が
負担に思う事は一つもない」
どう答えれば正解?
嬉しいけど本当にそれでいいの?
「ごめんね横から…………、
朝陽君は上条が好きだから
負担になりたくないんだよね?
でもね……上条はそんなの構わない
って思えるぐらい朝陽君を愛していて
全部分かった上でここにいる……
だから甘えていいんじゃないかな?」
芹沢さんの言葉に
僕の気持ちが動く。
「…………」
「上条はもう大人だよ?
自分の人生に責任取れる年齢、
朝陽君が上条を愛してるなら
遠慮なんて必要ないんじゃない?」
目の前にいる二人を
交互に見て蒼空への
気持ちが溢れ出す。
必要とされているなら
飛び込みたい。
言葉より先に溢れ出す涙。
「…………うんっ……」
やっとの思いで出た言葉は
返事だけ…………。
そんな僕に蒼空は優しく
髪を撫で微笑むと
先輩がいるにも関わらず
愛していると言って
頬にキスを落とされた。
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