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第3章第99話

蒼空side 朝陽が眠って暫くすると 要さんが俺を廊下に連れ出した。 「どうしたんですか?」 廊下は僅かに薄暗く 俺の声がいつも以上に響いた。 いけない……少しトーンを抑えよう。 「上条、朝陽君には まだ話さないの?」 要さんの問は直ぐに理解した。 本当は迷っている……でも、 「いきなり全てを話すのは 朝陽も混乱するかと思って……」 「……それもそうか」 要さんはそう言いながら 頭をポリポリ掻いている。 さっきはめちゃくちゃ 格好良かったのに。 この人らしい……。 朝陽が昏睡状態の間、 本当に色々な事が起きた。 要さんはそれを知っているから 気にかけてくれてる……有難い。 この先、朝陽が元気になって 全てを話したら、 俺の前でどんな顔をするだろう。 そんな事を思いつつ 廊下の窓から 移りゆく季節を眺めると 要さんが俺の肩を叩く。 「もう春が来るな」 要さんから出た自然な言葉、 俺は静かに頷いた。 支えてくれる存在が横にいる。 それだけで負担は減った。 「力貸してもらえますか?」 「今更……だな」 そう言って要さんは大きな手で 俺の髪をくしゃりと撫でると 勿論だ──。 そう力強く答えてくれた。 互いに微笑み合い、 それ以上言葉を 交わすことは無かった俺達。 ただ、朝陽の未来を願う気持ちは 要さんからもはっきりと伝わった。

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