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第3章第113話

蒼空side  次の日、俺は午前中会議を終えて 少し遅めの昼休憩で屋上に出た。 昨日からモヤモヤしたままの気持ちとは 裏腹に外はいい天気だ。 「はぁ……」  俺は溜息を吐きながら空いているベンチに 腰を下ろすと弁当を広げた。 訳あって外食はしたくない。 「……」  喜んでくれない。そんな風に受け取るなんて 思っても見なかった。ましてや泣かれるなんて 想像もしていない。  ただこの二年に起きた事実を話せていないだけ。 俺は安易にそう思っていたのだけど……。 「なんだ浮かない顔して」  背後から勢いよく肩を叩いて 俺の横に陣取ったのは要先輩。 相変わらず元気だなこの人。  俺はとりあえず弁当突きつつ 事情を説明した。 「一時帰宅ね、よかったじゃん」  いやまあそうなんですが。 「何をそんな考える必要あるよ、 ありのまま話せばいいじゃないの?」 「まあ……そうなんでけど」  要さんは俺の弁当を物色して 卵焼きを手に取り口に運んだ。 俺の卵焼き……。 「確かに話せばビックリすると思うぜ? でも喜ぶんじゃないの?」 「そうなんですけど……」  話を訊きながら再び俺の弁当に 視線が移る。これ以上食われるのは嫌だ。 「駄目です。食べてないんですか昼」  俺より先に昼休憩だったはず。 俺は弁当を阻止すると要さんはケチと 一言言ってフェンス際に移動した。 「一時帰宅ならちょうどいいじゃん、 連れて帰って見せればいいだけだろ」  いや見せればってそりゃ自宅はね? 俺との事も理解はするとは思うけど、 説明は必要だろうよ。  話を訊いてくれるのは本当に有難いけど いつもざっくりしすぎていると言うか 前向きと言うか。どうもこの人のノリが 軽く感じてしまうのは気のせいじゃない。  まあ朝陽の事故の時はさすがに こんなノリではなかったのだが……。 要さんの言う通り連れ帰って話すか。  ざっくりすぎなんだけど、 いつもこの人の言う通り考えが納まるのは 不思議な感じなんだよな。  

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