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第3章第101話

蒼空side 検査結果が出たその日、 担当医が難しい顔で 口にした言葉。 「検査結果の段階で 申し上げますと、 恐らく手足に痺れが 残ると思います……」 俺は天を仰ぐように 上を向いて奥歯を噛み締めた。 しかし、それを他所に 冷静だったのは朝陽。 「……先生、それは もう治らないのですか?」 静かな口調……。 泣き出す様子もなく 微動だにしない。 「リハビリである程度まで 改善が見込めますが……、 恐らく完全には回復するのは 難しいと思います」 朝陽は静かに深呼吸をし 一度目を閉じると 静かに言葉にした。 「そうですか……分かりました。 有難うございます。 でも、可能性はゼロでは ないのなら、僕は頑張れますね」 朝陽の言葉に先生も俺も 息を飲んだ。 きっと誰よりも今辛いのは 本人だろうに……。 朝陽は笑ってみせた。 どうして!? 泣いて暴れてくれる方が ずっといいのに、 朝陽は泣く事すらしなかった。 「先生っ……」 話が終わり廊下に出たところで 俺は呼び止める。しかし、 訊きたい事がありすぎた 俺は言葉に詰まった。 が────、 「朝陽君、強いですね。 私達も出来ることを やって行きましょう」 俺は先生の言葉に ようやく気づく。 そうだ、朝陽は悲しむより 前を向こうとしている。 なら、俺が出来る事を 探さなければ……。 俺は先生にお辞儀をして 病室へ戻ると、 朝陽は穏やかに微笑んだ。 それから数ヶ月間、 朝陽の血の滲むような リハビリが始まった。

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