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第3章第102話

病室と違って騒がしいオフィス。 本音を言えば、毎日朝陽に 付き添いたいが、 俺には仕事がある。 この二年で俺も責任ある 仕事を任されるようになった。 プライベートばかりを優先 するわけにはいかない。 それに…………。 正直ここ最近、 朝陽を見ているのが辛い。 嫌いだとかじゃなくて……。 朝陽は思うように動かない身体に 鞭を打つようにリハビリをしている。 担当の方や俺が制止しても 朝陽は首を振り、 汗だくなりながら 日が落ちるまでやっている。 春に差し掛かったあの日、 食事すらまともに出来なかった 朝陽は時間をかけて 一般の食事をするまでになり、 体力を付けてからリハビリが 始まって……三ヶ月。 季節は夏に変わった。 だが、二年の歳月は 朝陽から筋力を奪い、 残るであろう痺れや違和感を 伴って、自分の手足なのに 自由にならないようだ。 そんなもどかしい スタートになった。 もう止めよう……。 何度もそう言いかけて ハッとする。 誰より辛いのは朝陽。 けれど、今日まで涙一粒 流すことはなく、 頑張ったよ、もういい。 その言葉を朝陽は 俺に言わせなかった。 それでも俺は……朝陽が 頑張れば頑張るほど 胸が……苦しくなって 顔に出たのだろう……。 昨夜、朝陽に言われてしまった。 「蒼空……僕は誰かの為に 頑張ってるんじゃないよ……。 蒼空の為でもない……。 僕は僕の為にやっているの! だから、ごめんね……。 見ているのが辛くても 僕を甘やかさないで」 その言葉は俺の胸にグサッと来た。 甘やかす……そうじゃない。 決してそんな事はないのに 朝陽は敢えてそう言ったのだろ。 出会った頃はまだ幼くて、 独りには出来ない弱々しさを 持っていたのに、 いつの間にか弱さは消え、 大人びた表情をするようになり、 強い眼差しを見せるようになった。 そうか……もう大人なんだ。 朝陽の成長は 嬉しいような寂しいような。 複雑な気持ちを押し隠し、 昨晩は帰宅した。 「お疲れ」 俺は考え事をしつつ パソコンに向かっていたので 終業時間に気づく筈もなく、 要先輩に肩を叩かれ ようやく我に返った。

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