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第3章第123話

蒼空と湯船の中でべったりくついて寛ぐ。そんな時、蒼空が口にした。 「朝陽、直ぐにじゃなくていい。でも一度一条さんに会ってくれないかな」  あの人に会う……。蒼空の話で色々変わったと訊いてもまだ少し怖い。でも……。 「もう少し落ち着いてからでいい?」 「勿論だよ」  あの人は僕に会ったらどんな顔をするんだろうか……。そして僕は? 「そろそろ出ようか」  僕は頷き蒼空に支えてもらいながらお風呂を出る。身体も髪も蒼空が拭いてくれた。早く自分で出来るようにならないと。着替え終わり抱きかかえられ一回のリビングへ行くとソファに座らされる。 「何か食べたいものはある?」  食べたい物か……。二人で食べた茄子とトマトカレーを思い出しリクエストすると蒼空は笑顔で分かったと言った。  にゃーと心愛が丸まっていたソファから動き出す。 「心愛おいで」  呼ぶと膝の上に乗ってくる。本当大きくなったな。あんなに小さかったのに。僕は心愛を撫でながら思いにふける。 「覚えてくれていたんだね」   心愛は理解するかのように鳴く。愛おしくて僕はめいいっぱい抱きしめた。僕が助けた猫も今何処かでこんな風に幸せに暮らしているんだろうか。   「心愛の写真見るか?」  カレーを作ってはずの蒼空がキッチンから声を掛けてくる。 「見たい、あるの?」 「毎日撮ってたから」  蒼空は料理していた手を止め、アルバムを持ってきてくれた。その量は二年分。 「見てて、今作るから」  僕は受け取ると一枚一枚捲っていく。やっぱり小さい。アルバムを捲る度、僅かに大きくなる心愛。僕が見れなかった成長記録。なんだか涙が出る。 「調べたら心愛はソマリって種類みたいだよ」  キッチンからの声に僕はそうなんだと頷く。写真はどんどん成長し今の大きさになっていった。 「心愛ごめんね……あの日一人にして」  僕は心愛に話しかけると、心愛は擦り寄ってくる。愛おしい存在。膝の上でよしよしと喉を触るとゴロゴロと喉を鳴らす。 「ずっと待っていてくれたんだよね」  抱っこしてギュッとすると心愛は大人しく抱かれた。本当に人懐っこい。有難う心愛。僕は小さな声でそう言った。  心愛と共にソファに寝転ぶと瞼が重い。カレーまだかな。お腹が少しグーと鳴る中僕は半分夢の中。いい匂い立ち込めるが眠さには勝てず、僕は心愛と一緒に眠ってしまった。  どのくらい寝ていたのか起きてみると、毛布が掛かっていて、目の前で蒼空が本を読んでいた。ごく普通の日常風景。それだけの事が僕は嬉しかったんだ。心愛と蒼空、そして僕。三人だけの空間。ゆっくりと時間がそこに流れている。それが堪らなく嬉しかった。 「おはよう」  僕の声に読んでいた本を置いて蒼空は背伸びする。 「おはよ、よく寝ていたね」  僕は時間を見るともう時刻は六時を回っていた。 「お腹空いたろう、出来ているから食べよ」  僕のお腹は正直でグーと大きく鳴った。僕と蒼空は顔を見合わせ大笑い。僕はソファから立ち上がると物に捕まりながらテーブルまで歩いてみた。

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