132 / 140

第3章第131話

 その夜は蒼空と沢山の話をした。今までの事、これからの事。勿論僕の夢はまだはなしていないけど。その日は心愛と蒼空と三人で寝て、翌日目を覚ました。  心愛と沢山遊んだ。蒼空が心愛のおもちゃを沢山買い込んでいることに笑った。そしてお昼。 「心愛いい子にしているんだよ」  僕は名残惜しそうに心愛と真新しい家を見回して、蒼空に抱かれ車に乗り込んだ。 「また直ぐ帰って来れるさ」 「うん」  僕はもう一度家を見つめ、もっと頑張って早くここで暮らせるようになるんだと誓った。蒼空は車のエンジンをかけ病院へと発進する。見慣れない景色を眺めながら二十分程で病院へと着いた。  病院の入り口には担当医の先生が待っており、車椅子に乗せてもらうと挨拶をした。 「朝陽君お帰り、ゆっくりできたかな?」 「はい、楽しかったです」 「それは良かった」  先生はニッコリ微笑んで僕の頭を撫でてくれた。蒼空と先生と三人で病室か向かう。たった二日いなかっただけなのに懐かしい気分になる。ふと病室部屋のネームプレートを見て僕は驚いた。そこには上条朝陽と書いてあったからだ。 「これ」 「ああ、これかい? もう話はしたんだろうって思ったから変えておいたんだ」  先生知っていたんだ。僕は少しだけ恥ずかしくなって顔を赤く染めた。 「さあ、ベッド行こうか」  僕は頷き蒼空に車椅子を押してもらって、ベッドへと寝かされた。 「身体の状態ちょっと診せてね」  先生はそう言って触診を始める。蒼空は傍らに座って様子を見守っていた。 「うん、問題ないね、後はリハビリ頑張るだけだ」 「頑張ります」  先生はニコッとして僕の頭を撫でた。 「その調子だね。何かあったら直ぐに教えて、でも無理だけはしないように」 「はい」 「先生宜しくお願いします」  蒼空が頭を下げると先生は微笑んでこちらこそと言った。先生と蒼空は話があるからと病室を後にする。残された僕は窓の外を眺めた。一日でも早く退院しないと。それに……。  僕は決めていた。リハビリを頑張ってこの手足の痺れがなくなったら叶えたい夢がある。現実は厳しいかもしれないけどそれでもやってみたい。だから僕は頑張らないといけない。その為には逃げずに一条さんとも話をしないといけない。もう逃げちゃダメなんだ。 「朝陽どうした?」  蒼空が病室に戻ってきて、窓の外を眺めていた僕に声を掛ける。 「どうもしない。頑張らないとって思っただけ」 「そっか」  蒼空はくしゃっと僕の髪を撫でニッコリ微笑む。僕も微笑み返してベッドに横たわる。 「頼むから無理だけはしないでくれよ」 「わかってる」  蒼空の表情は心配そうな顔。僕は大丈夫だよって蒼空の手を握る。蒼空は僕の手を握り返して頬にキスをくれた。大部屋なら出来ない事も個室なら許される。僕も蒼空にキスを返して僕らは笑い合った。

ともだちにシェアしよう!