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付けたし

きちんと話をするべく 僕は時間をもらい 割れたカップを片付け 新しいコーヒー注いで ソファに腰を下ろした。 「何処から話せばいいだろう……」 一条さんは軽くネクタイを緩め ゆっくり息を吐き話しはじめた。 「君のお母さんと私が出会ったのは、 お母さんがお父さんと結婚して 間もなくだったと思う……」 「…………」 「お母さんにちゃんとした人がいる……、 分かっていたんだけどね……。 彼女は綺麗だったし 何より魅力的だった」 息子としては……そうですか…… とも言えずただ黙って耳を傾けた。 「いけない事だとお互い分かっていて 一晩だけ、私は彼女と関係を持った、 後にも先にも……その日だけ」 「一晩?……」 一条さんはゆっくり頷き そうだよと静かに答えた。 「だから……彼女が妊娠したと 訊いた時は正直驚いたし 私の子ではなくてご主人の…… 君のお父さんの子だと私は思った」 「…………」 「だけどね……君が生まれて 血液型が分かった時に 彼女は直ぐに私に連絡をくれた。 やっぱり貴方の子だと……」 「父は────、 父は知っていたのですか?」 「気づいていた…… 頭のいい人だったから」 母は……父が死んで 変わったのではない……。 元々……そう云う人だった……。 何処かで気づいていたのかもしれない。 ただ気づかない振りをしていただけ。

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