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第3章第134話
蒼空side
仕事が終わり直で病院に向かう。病室に顔を出すと朝陽の姿はなかった。まだリハビリしているのかな。俺はリハビリセンターに顔を出すと朝陽は汗だくになりながら必死に歩いている。声を掛けるべきか戸惑う俺。そこへ担当医の先生がやってきた。
「上条君来たんだね。見ての通り朝からあの調子で」
「辞めないんですか?」
「休憩は取るけどずっとこの調子だよ」
俺は汗だくになりながら頑張る朝陽が愛しい。本当に前向に頑張っている。俺は迷ったが朝陽に声を掛けた。
「朝陽」
「蒼空来てくれたんだね」
朝陽は立ったままこちらを向いてニッコリと微笑む。どこからそんなパワーが出ているのか。朝から日が暮れるまでリハビリに励むその姿は尊敬に値する。
「そこで待ってて歩いて行くから」
俺は手すりの端に陣取ると朝陽を待った。朝陽は端からゆっくりと歩き始め一歩一歩俺に近づいてくる。一瞬足がもつれバランスを崩す。俺は頑張れって声に出さず応援した。
「もう少し」
俺の言葉に朝陽は必死に足を動かす。額からは汗が流れ辛いはず。それでも弱音を吐かない朝陽。
「頑張れ」
朝陽は最後の力を振り絞り後五歩の距離をゆっくりと足を進めた。あと一歩その瞬間に一歩踏み出して俺に倒れ込むように抱きついてきた。俺はよしよしと頭や背中を撫でるTシャツはびっしょりで頑張った事が伝わってくる。
「歩けたよ」
「よく頑張ったな」
朝陽は照れくさそうに笑うと俺に抱きつく。こんなにびっしょりになるまでどれだけ頑張ったのだろうか。仕事でなければ一日付き添ってやりたい。俺は濡れた髪をくしゃくしゃと撫でまわし褒めまくる。
「今日も頑張ったんだな」
「うん」
「お風呂入れるのか?風邪ひく」
「先生が手配してくれてる」
俺は朝陽を抱き上げると車椅子に座らせた。リハビリの担当先生から水分をもらい朝陽に渡す。余程喉が渇いていたのか一気に飲み干す朝陽。
「生き返った」
朝陽の言葉にその場にいた俺達は笑いに包まれた。朝陽はお風呂に入る為担当医の先生と一緒にリハビリセンターから出ていく。俺は先に病室に戻って帰りを待った。
朝陽がやりたい事ってなんだろうか。これだけ頑張っているのは何の為か。いつか話すと言われているけど気になって仕方ない。一時間程で朝陽はさっぱりした顔で病室に戻って来た。
「髪濡れてる」
「あ、うん」
俺は朝陽の髪を拭きながら今日あった事を話す。朝陽もまた今日一日の出来事を話す。お互いに話して把握する。
「仕事大変でしょ?」
「大変だけど充実はしているよ」
朝陽はそうなんだとニッコリ微笑む。ベッドへ寝かせ俺は傍らに腰を下ろした。
「無理してないか?」
「してないよ大丈夫」
朝陽は目を輝かせこう言った。早く自由に歩きたいんだと。その気持ちは痛い程分かる。今は一人で出来る事は限られている。入浴も介助が必要だ。自由になりたい。朝陽の思いはきっと自分でなんでもできるようになりたいんだ。昔みたいに。きっとやりたい事の為にも一日でも早く今の状況を抜け出したいはずだ
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