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第3章第104話

 数日後、仕事帰りに病院へと向かう。 俺は病室の前で一呼吸してノックするが 部屋からの返事はなく、 中に入るとそこには朝陽の姿はなかった。 「まさか……まだリハビリ?」 そう思って急いで向かう廊下は もう日が沈み始め赤く染まっている。 俺がリハビリテーションに着くと、 思った通り、朝陽は汗だくになりながら 手すりに捕まり、必死に一歩また一歩と 前へ前へ歩いている。 「朝陽……」 俺は声を掛けようとするが、 あまりの真剣さにその場に立ち尽くした。 どうしてそんなに頑張るんだ? ぐるぐる考え込んでいると、 ガタンと音がしてハッとする。 目に飛び込んで来たのは息を切らせ、 バランスを崩した身体をなんとか 立て直している愛おしい姿。 「……朝陽!」 俺はいたたまれず、急いで駆け寄ると、 朝陽は珍しく大きな声で制した。 「来ちゃダメ!!」 いつも物静かな彼の力強い声に、 思わず足を止めた。 俺の目に映る顔は驚くほど大人で 内心ドキッとする。 「はぁ……はぁ…… 僕が歩いて行くから蒼空は前にいて」 「でも……」 「お願い」 戸惑いを隠せない自分を他所に 朝陽はその場で立ち上がると、 呼吸を整えてこちらを向いた。 今は何を言っても止めないだろう。 俺は息一つ吐いて、 朝陽の数メートル先に立った。 意外と意志が強いって今更知ったよ。 俺の方が揺らいでどうする。 しっかりしろ!自分。 俺はそう自分に言い聞かせ朝陽と向き合う。

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