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第3章第105話

 もう既にクタクタなはずの朝陽は まだ痺れの残る手足で俺の元へと ゆっくり一歩を踏み出す。 「朝陽……」 俺は思わず名を呼び、息を飲んだ。 伸びた身長や髪、大人になった顔立ち。 だけど、痩せ細った身体……。 一体どこにそんなパワーを 秘めているのだろう? 「はぁ……はぁ……」 暗闇に聞こえる荒い息遣いと、 真剣な眼差しに光る汗。 今すぐ抱きしめたい。 そんな衝動を必死に堪えるのは 目の前の愛おしい姿。 ガタン——。 突然の物音と同時に 飛び込んで来たのは崩れ落ちる 朝陽の姿。 「あさ……」 「大丈夫!そこにいて……」 俺は言いかけた言葉を ぐっと飲み込み留まる。 あと少し……。 本当は今すぐ手を差し伸べたい。 でも、朝陽はそれを許さない。 言葉の強さと空気がひしひしと伝わる。 朝陽は少し顔を歪ませながら立ち上がると、 俺の方をしっかりと見て歩き出す。 後数メートル。後ちょっと……。 残り一歩になった時、俺は自然と 手を広げた。目の前の朝陽は 汗だくなまま、にっこりと微笑むと、 まるで力尽きるように 腕の中へと飛び込んできた。 「はぁ……はぁ……」 「頑張った……頑張ったよ」 俺はそれしか言葉に出来ない。 腕の中の愛おしい存在は、 息を切らしながらも回した 細い腕でギュと俺を抱きしめる。 「はぁ……蒼空のここ懐かしい」 沢山褒めてあげたい。 どの言葉が一番伝わる? だけどそのどれもが足りない気がして、 気が付けば朝陽の顎に触れていた。 「蒼空?」 「あさ……ひ」 言葉では伝えきれない愛おしさ。 俺は朝陽の顔を引き寄せ その唇を塞いだ。 「んぅ……」 最初は触れるだけのキス。 離れた瞬間、視線が絡み合い 朝陽は自分から擦り寄る。 ここは病院。分かっていても止まらない。 俺は再び朝陽の唇を奪うと、 深く深く貪った。

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