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第1章第5話
「泥棒猫」
母が蔑む目でそう吐き捨てた。
高校へ上がって直ぐの事。
10歳の時に父は急死。
幸せだった平穏な毎日は崩れ
母は父を亡くし人が変わったように
男に溺れていった。
そんなある日、母の男が
俺を無理矢理抱いたんだ。
「や…………めて」
「たす…………けて……やぁあ」
それを母は助ける事なく
僕を冷たい目で見ていた。
「お前さえいなければ!」
あんなに優しかった母は
その日、そう言って姿を消した。
あ……僕はとうとう、
捨てられたのだ……。
そう理解し汚れた身体を見て発狂。
その場で手首を切った。
だが、皮肉にも俺を助けたのは
俺を犯した男。
でも……その日から
彼も姿を見せなくなった。
誰も────いない
せめて父さえ生きていたなら……。
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