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第1章第12話
「……なんであんなとこにいた?」
なんて答えれば正解なのか……?
気がつけばあそこにいた。
「猫……子猫が鳴いてたから」
よく見れば僕の足許近くで
丸くなって寝てる。
「なんだ、こいつお前の猫じゃないのか」
僕は僅かに頷いた。
上条さんは参ったなと
ブツブツ言いながら
頭をポリボリ掻いている。
こんな風に誰かと話したのは、
いつ以来だろ────。
ホテルに行く男は、
部屋に行けばヤッて終わりだ。
会話なんてない。
少し胸が痛む────。
「だけど……
俺が今日たまたま車じゃなかったから
見つけたんだぜ?気をつけろよ」
溜息混じり、しかし
少し強い口調で言われた。
「…………」
何も言えない。
迷惑かけているのは分かっている。
だけど……どうせ誰も心配する人なんて
僕にはいない。
例え見つけられなかったとしても、
僕は良かった────。
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