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第1章第13話
穏やかな空気だったと思う。
上条さんの一言までは……。
「そう言えばお前携帯は?」
「…………ない」
持ち合わせていないのは本当だ。
持っていても誰の連絡先も入らない。
「今時ないとはね……まあいい、
親に連絡したいんだけど?」
その言葉に胸がざわつきだす。
僕の表情からは、見る見る血の気が引いた。
「……どうして……」
震えそうな声を必死に抑える。
「どうしてって、お前未成年だろ?
そんな熱でどうやって帰るんだよ」
「………………」
「連絡先教えろ」
駄目だ……これ以上踏み込まないで。
僕は布団を剥ぎ、フラフラと立ち上がる。
「おい、何処行くんだ?」
「帰る……」
これ以上ここにいられない。
僕は顔を見られないように
顔を逸らす。
足許がふわふわしてる。
それでもここを出なきゃ!
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