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第3章第107話

 俺は病室を後にして帰宅途中にある スーパに立ち寄り夕飯の 食材を買って帰宅した。 「ただいま」 そう言っても朝陽は病院だし 誰もいないのだが癖になっている。 しかし奥からチャリンと鈴の音が 聞こえ足音を立てずに寄って来たのは 飼い猫の心愛。 まるでお帰りと言うようにミャーと 一鳴きして足元に擦り寄る。 「よしよし、ただいま。 いい子にしてたか?」 俺は足元の心愛を抱き上げると しっかり撫でてやる。 心愛は腕の中でゴロゴロと 喉を鳴らしてもう一度ミャーと鳴いた。 本当、言葉を理解しているのか なんなのか不思議な猫だ。 とりあえず心愛に餌を与え、 遅めの夕食を済ませる。 ようやく一息つき俺と飼い猫が ベッドへ潜り込んだのは 二十三時を回ってから。 がしかし寝落ちかけた瞬間、 スマホが鳴り響いて俺は飛び起きた。 「誰だよこんな時間に」 俺は内心ムスッとしながら ろくに名前も見ずに応答。 「もしもし?」 いかにも不機嫌な態度に 電話の相手は少し間を取るのを感じた。 「すまないもう寝ていたかな……」 この声もしかして一条さん? 「あ、いや……」 思わぬ相手に俺は誰も いない部屋で大慌て。 「こんな時間に悪かったね」 「え……あ、いや……すみません」 俺はその場で頭を下げる。 一体何に頭を下げているのやら。 「上条君、明日時間あるだろうか?」 「明日ですか? 大丈夫です」 「じゃあ明日、時間はまた 追って連絡入れる」 俺は終始ペコペコしながら 返事をして電話を切る。 やばいマジでビビった。 朝陽の事故以来、連絡が来たのは 初めてではないのだが、 それでも滅多にない出来事に 情けないほどテンパる自分。 疲れて眠かった目は完全に冴えてしまった。 明日、一体何の話だろうか? そんな事を二時間以上考え 眠れたのは結局夜中の二時を回っていた。

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