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第1章第17話
父の死は事故だった。
出張先から帰る途中
運転を誤り単独事故を起こした。
その日父は帰らぬ人になった。
あの頃、父は仕事が立て込み
殆ど帰って来てはいない。
父は僕が生まれる頃に
独立し事業を立ち上げた。
5年で起動に乗せ
仕事に追われる日々。
母はもしかしたら
寂しかったのかもしれない。
まだ幼かった僕には……
それすら気づけなかった。
アルバムの中はそれを象徴するように
母との写真ばかり。
出しっぱなしの水を止め
自分の顔を見る。
「…………か……さん」
あの日、お前さえいなければ……。
その言葉が胸に突き刺さる。
僕さえいなければ
母はもっと早く自由になれたのだろうか?
あの幸せは────、
もしかしたら幼い僕が見ていた
幻想なのかもしれない。
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