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第1章第24話
朝陽side
溜息吐きながら、
自宅までの帰り道自然と俯く。
ふと目に入る、
左手首のリストバンド。
「……見られてないんだ」
昨日は確認する余裕すらなくて
気付かなかったが
外された様子はない。
あの日僕は
自分で自分を傷つけた。
その傷は今も消えない。
「また……独り……か」
ポツリと呟いてまた溜息。
あ……そうだ今日はバイト……。
重たい足取りは更に重くなった。
生活の為と始めたバイト。
でも笑う事が苦しい今
仕事とは言え笑顔を作るのはとても辛い。
家のローンは父が亡くなり、
掛けていた保険金で支払われた。
母が出て行って半年。
住む場所はあっても自分の生活費は
稼がないと
貯金はいくらあっても足らない。
出て行った母は
金目の物は一切手をつけず
自分の衣類だけを持って姿を消した。
「……バイト行きたくないな……」
重い足取りで曲がり角を曲がるば
見えてくる一軒家。
僕がふと顔を上げると見知らぬ男性が
自宅の前に佇む。
「誰……だろ」
僕が恐る恐る近づくと
男性は僕の気配を感じたのか
こちらを向いて
一瞬何とも言えない表情を浮かべたが
その顔は直ぐに笑顔に変わった。
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