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第1章第34話

先輩は俺の話を 最後まで訊いて 少し難しい顔をした後 静かに口を開いた。 「そのぐらいの年頃で 初対面の人間の前で泣き出すのは 余程の事があるんじゃないかな……」 「…………そうですよね」 胸がざわつく。 やっぱり話を訊くべきだったか……。 「誤解しないでくれ、上条を 責めてるつもりはない、 話を訊いたところで話したとも 思えないしね……ただ」 「ただ……?」 「家出とかの可能性も あるんじゃないかな……」 家出……確かに親に連絡されるのを かなり拒んでいた……。 不安だけか募る……。 「心配なら帰るか?」 芹沢先輩の一言に俺は顔を上げる 「部長には俺から上手く言っておくよ」 「でも……」 それは迷惑なのでは……? 踏み切れない俺を他所に 先輩はにっこり笑い くしゃと俺の頭を撫でた。 「どっちにしても 仕事にならないだろ? 部長は任せとけ……」 俺は少し悩んだ末 先輩に甘える事にした。 「すいません、後お願いします」 俺が慌てた様子でそう伝えると 先輩は任せろ……!そう返してくれた。 俺は急いでオフィスに戻り 荷物を取る。 「おい、上条どこ行く?」 部長の言葉に脚を止めかけたが 俺はそのままオフィスを出た。 後で怒鳴られるのは覚悟の上。 先輩……頼みます。 俺はそう思いながら 急いで自宅に向かった。

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