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第1章第35話

朝陽side 散々泣きはらしようやく落ち着いて 時計に目をやれば、バイトの時間は とっくに過ぎている……。 「……首かな……」 小さな声でポツリ……。 誰もいない空間に 吐き出す言葉がやけに虚しい……。 やっと見つけた仕事だったのに 連絡もしなかった……。 それでもバイトをする気には 到底なれない。 僕は渡されたスマホを手に 家を出た……。宛などない。 頭の中はグチャグチャ……。 ただ……誰かに触れたい。 抑えられない衝動に 僕の視線は相手を探す。 だけど────ふと脚を止める。 僕の中で今まで感じた事のない 虚しさが心を覆い尽くす……。 ────だめだ……。 誰か────。 そう思っても、真新しいスマホに 連絡先など入ってはいない。 僕の心は知りたくない 事実に潰されてしまいそうで その場に座り込んだ。 「誰か……誰か……」 何かに導かれるように ポケットのメモを思い出す。 僕は震える手で取り出すと 涙が溢れた……。 つい昨日の事なのに……遠い記憶のよう。 僕に向けられた笑顔だけが 浮かんでは消える。 散々迷った挙句 僕は震える手で彼の 番号を入力し 発信ボタンを押していた。

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