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第1章第37話

車を走らせようやく 目的地付近に着き 俺は車を端に停車すると 車中から辺りを見渡す。 「何処だ……?」 すると最近めっきり見なくなった 公衆電話のボックスの中に 蹲っている姿を捉えた。 俺は慌ててシートベルトを外し 車を降りてボックスのドアを開けた。 「氷浦?」 突然の俺の声にびくんと身体を震わせる。 「氷浦……大丈夫か?」 その場に腰を降ろし 目線の高さを合わせると 氷浦は埋めていた顔を ゆっくりと上げ俺の顔に視線を向けた。 氷浦の目からはポロポロと涙が溢れ その目は真っ赤に腫れている。 「…………何があった?」 あまりに哀しい顔……。 余程の理由があるのか……。 だけど、氷浦は唇をぎゅっと噛み締め 何も話そうとはしない。 「とにかく家へ行こう……」 そう言って、氷浦の痩せた身体を起こし 服についた汚れを払うと 俺は彼を連れ車に戻る。 車中でも氷浦は暴れる事もなく 言葉を発する事もないまま 涙が頬を伝うだけだった。 その姿が…… 俺の胸をチクリと締め付ける。 事情を訊かなければ…………。 俺は黙ったまま車を走らせ自宅に戻った。

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