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キスする理由(聖&爽×葵)

「「葵せんぱーい」」 俺達が懸命に呼んでも、葵先輩は頬を膨らましてこっちを向いてくれない。椅子の上で体育座りまでしてるから、典型的な拗ねポーズだ。すごく可愛いんだけど、自分達が怒られてるってなるとそうそうのん気にもしてられない。 なんで温厚な先輩がこんなに怒ってるか。 別に怪我をさせたとか、先輩の嫌いな嘘をついたとか、そういうことじゃない。 葵先輩の部屋に遊びに行って、中に通してくれたときはいつも通りの優しくて笑顔の葵先輩だった。 ちょっと待ってて、なんて言って少しのあいだ俺達を部屋に残してどこかへ行ってしまったときも普通だった。 戻ってきたときも、もちろん普通。というよりもむしろ上機嫌だった。 けど、表情が一変したのは机の上にあった空っぽのプラスチックを見てから。 もしかしなくとも、俺達が勝手に冷蔵庫をあさって中にあったプリンを食べてしまったkとが原因、だよね? だから必死に謝ってるんだけど、なかなか許してくれない。相当楽しみだったんだね。可哀想なことした。 けどプリンぐらいで、って思ってしまうのも否めない。先輩ってつくづくお子様だ。そこが可愛いけど、せっかく遊びに来たんだから楽しく過ごしたい。 「「プリンなら新しいの買ってあげますから」」 両脇に座って葵先輩をなだめても、今度は下を向いてもっと丸く縮こまってしまう。 「遥さんに、貰ったやつ……だったのに」 小さな声で発せられたのは恨み言。通りで美味しかったわけだ、なんて言ったらますます先輩の頬が膨らんでしまった。心なしか、目が潤んできてる。 まずい、泣くかも! そう思って慌てて葵先輩の頭を撫でてもダメだった。葵先輩の白い頬に涙がぽろぽろ伝い落ちていってしまう。 「「ごめんなさい」」 泣かせたなんてばれたら番犬と猫に何されるかわかったもんじゃない。俺達はとにかく謝って葵先輩に許してって頼み込む。 「も、いいよ」 葵先輩もだんだん気持ちが落ち着いてきたのか、”プリンで怒ってごめんね”なんて笑ってくれた。でもそれが俺達を余計に申し訳ない気持ちにさせた。 人のものは食べちゃダメなんだよ、ってまた笑顔で付け加えてきた葵先輩に俺達はひとつ提案した。 「「今度、おいしいプリン食べにいきましょ?」」 遥さんのは俺達が食べちゃったなんてバレたら恐ろしいから無理だけど、どこかおいしいお店を探して連れてってあげよう。 「約束、ね?」 葵先輩が両手の小指を見せてきたからそれに俺達も小指を絡めて、指きりげんまんをした。 「んっ」 でもそれじゃ寂しいから、おまけに両側から頬に軽くキスを贈った。 俺達が先輩にキスする理由。 ごめんねと、約束の印だから。

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