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第8回人気投票お礼(京介×葵)3

「今日の分の授業、京介のためにちゃんと葵ちゃんが聞いておかないとダメじゃない?」 「でも……京ちゃん居なかったら、教室、入れない」 「頑張れるよ、葵ちゃんなら」 そう言って遥はごく自然に葵の額に口付ける。苦情を申し立てたいが、京介はどうにも得体のしれぬ怖さを持つ遥に対してはあまり強く出られない。 「一緒に教室まで行ってあげる。昼休みも迎えに行く。もちろん帰りもね。どう?」 ダメ押しとばかりに遥が学園で出来る限りフォローしてやると約束すれば、葵はおずおずと頷いてみせた。そして遥に促されるままに着替えをするために自室へ向かってしまった。 「何悔しそうな顔してるんだよ。葵ちゃん、ここに置いておいたら絶対に伝染るだろ」 「分かってるよ」 「いい機会だよ。京介が居なくても少しずつ行動出来るようにならないと。……京介は寂しいだろうけどな。我慢しろよ」 遥の言っていることは分かる。兄も遥も、いつまでも京介の背中に隠れて怯えている葵をどうにかしなくてはと奮闘してくれている。自分もそれに協力しなくてはいけない。そう思っていても、遥の表現する通り、京介のほうが寂しくて堪らない。自分以外に懐く姿をこれ以上見たくないのは本音だ。 二つ年上だと言うだけで随分余裕を見せる兄も遥も京介には理解しがたい。”お大事に”と言い残して部屋を出て行った遥に、何も言い返せなかった。 「……京ちゃん、行ってくるね」 着替えを終えた葵が再び京介の元にやってきた。目にいっぱい涙を溜めて、まるで今生の別れとも言える雰囲気だ。それがあまりにも可愛くてすぐに抱きしめたくなるが、きっとここで手を繋いでしまったら葵はこの部屋から出られなくなる。 「無理すんなよ」 風邪を引いている京介が言う台詞ではないかもしれないが、不安がすぐに体調に表れる葵のことが気がかりで仕方ない。葵がこくりと頷くなり、付き添っていた遥が問答無用で葵を連れて行く。優しいようで、スパルタ教育なのも遥の特徴だ。 家が静かになったのを感じると、次第に薬が効いてきて重たい眠りに誘われていく。京介が意識を手放す瞬間に浮かんだのはやはり葵の泣き顔だった。

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