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第8回人気投票お礼(冬耶×葵)1
※サイトで行なっていた人気投票のお礼としてアップしているSSです。
※葵中3のお話
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成長のペースが遅いのは知っていた。体も心も、周りからはどんどん取り残されてしまっている状況を何とかしてやりたいとも当然思っている。でも幼い頃に比べたらこれでも随分と大きくなったし強くなった。だから冬耶はのんびり構えていたのだけれど……。
「お兄ちゃん、明日から甘えるの我慢する」
不意打ちのように葵から宣言された言葉に、焦りを隠さずには居られなかった。葵曰く、中等部で一番大きな学年になったのだから、甘えん坊は卒業するのだと言う。
けれど、そんな宣言をするのが冬耶の膝の上なのだからいささか信憑性に欠けるのは否めない。
「急にどうしたの?何か言われた?」
「ううん、そうじゃない。お兄ちゃんが三年生の時はもっと大人だったから、頑張る」
確かに二年前の自分と、今の葵を比べたら確かにまだまだ幼い。寮には入ったものの、未だにしょっちゅう高等部の冬耶の元にやってくるし、京介無しで教室に入るのも怖がっている。
「甘えるのってどう我慢するんだ?」
「一人で寝る、とか……」
「寝られる?」
後ろから抱きかかえてやりながら顔を覗き込めば、言い出した張本人が浮かない顔をしている。隙あらば冬耶の腕の中に潜り込んで眠ろうとするこの子が、いきなり一人で眠れるのだろうか。
「朝、おはようってギュッてするのもやめる」
「じゃあおやすみ前のギュウも無し?」
「……うん」
頷くくせに心細そうな顔をするなんて反則だ。冬耶だって日頃のスキンシップがお預けされるのは辛くて仕方ない。今すぐ撤回させるように粘りたくなってしまう。でも葵がせっかく自立しようと志した気持ちを、すぐに手折るのは可哀想だ。
「ってことは、いってらっしゃいとか、一日頑張ったねのギュウもだめか」
「あ、それは……」
「それはいい?」
「ん、やっぱり、我慢する」
葵の心を揺さぶるなんて意地悪かもしれない。そう思うが、きちんと確かめておかなくては、冬耶が思わずハグしてしまう危険性がある。
「なぁ、お兄ちゃんと我慢するってことは、はるちゃんとか京介とも我慢するんだよな?」
「え、そうなの?」
「違うの?まさかお兄ちゃんだけ?」
当然遥と京介への甘えん坊も卒業するかと思いきや、葵はそこまで考えていなかったらしい。一気に三人の支えを失くすことを想像したのか、葵の瞳にじわじわと涙が溜まってくる。でも冬耶だって泣きたい気分だ。どうしてお兄ちゃんが一番最初の卒業の対象なのか。
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