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第8回人気投票お礼(冬耶×葵)2
「寂しいよあーちゃん。お兄ちゃんと離れたいってこと?」
「ちがう!お兄ちゃんはいっつも優しいから、全部甘えたくなっちゃって。それがダメだなって思っただけ」
確かに遥は葵を甘やかしているようで、成長させるために上手に誘導している。時には少し厳しさを感じるぐらい諭すこともあった。京介はその優しさがわかりにくいし言葉が乱暴だ。京介に悪気はないのだが、葵はよく泣かされてさえいる。
だから葵が何も考えず、ただひたすらに甘えられる存在は冬耶だと言いたいのだろう。
そう言われてしまえば、冬耶側が離れたくないからという理由で引き止めるのは良くない。これも成長のきっかけになるのなら協力してやるのが兄の務め。
二年後には冬耶はもうこの学園には居ない。もし付属の大学に進学するにしても敷地はまた別の場所にあるのだから、今までのように頻繁に会えなくなるのは決まっている。少しずつ距離を置く練習をするのにはいい機会かもしれない。
「じゃあ、明日試しにお兄ちゃんのこと我慢してみる?」
不安そうではあるが、葵は冬耶の提案にこくりと頷き、そして補給とばかりに擦り寄ってきた。
翌日、始まった”お兄ちゃん断ち”は朝から早速効き目が表れてしまった。普段通り冬耶と遥が連れ立って中等部の寮の食堂に顔を出し、朝食に付き合うまでは良い。葵も京介に連れ添われてにこにこと笑みさえ浮かべていた。
問題は寮を出て、校舎へ向かう時。
「今日は生徒会あるから、放課後は俺達の事待たずにまっすぐ寮に帰りな。夕食の時またこっちに来るよ」
「うん……あの」
「なに、あーちゃん」
別れを告げれば、名残惜しそうに葵が冬耶のブレザーを掴んでくる。当然だろう。毎日葵が苦しいと言うぐらいきつく抱き締めてお別れするのが日課だったのだ。
早くもギブアップだろうか。冬耶が心配になった時、もう一人の弟が少し機嫌の悪い声を出し始めた。
「お前、全然我慢できてねぇじゃん。だから言っただろ?無理すんなって」
「……大丈夫、出来る」
京介の指摘でムキになった葵がブレザーの裾を離してしまった。そしてそのまま、京介の隣へと戻ってしまう。京介相手にはぴったりと腕を絡めてひっつくのだから、妬かずにはいられない。
「葵ちゃんより冬耶のほうがダメかもな」
高等部の敷地に向かう間、遥に指摘されたのはまさしく冬耶が考えていたこと。葵を抱き締めずに登校するなんて、どうにも気持ちが収まらなくて耐え難い。
「確かに、もうあーちゃん撫で回してちゅっちゅしたくて仕方ない」
「気持ち悪いよ、冬耶」
涼し気な顔をした親友に咎められるが、本心なのだから隠すだけ無駄だ。それに遥のことだからそんな冬耶の願望さえ、見透かしているのだろう。
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