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翌朝(聖&爽×葵)※未来編

苦味のあるコーヒーの香りが葵を眠りから目覚めさせた。といっても瞼は重たい。カーテンの隙間から見える空がまだ白けきっていないのだから、目覚めるには相当に早い時間だ。 左隣を見ると、そこには熟睡する爽の姿があった。出会った頃に比べたら随分と成長し、もう葵よりも年下だという面影はちっともないのに、葵のパジャマの裾を掴んで眠る姿はやはり可愛い後輩のままだ。 もう一度彼に寄り添って眠り直そうか。そうも考えたが、あと一人この場に居なくてはならない存在が見当たらず、葵は上体を起こした。 うっすらと開いた扉からは隣のリビングルームから洩れる光が差し込んでくる。コーヒーの香りもここから流れ出て来たのだとすぐに分かった。 ベッドを抜け出て立ち上がると、腰からズキンと鈍い痛みが広がる。身なりはすっかり清潔に整えられてはいるものの、体には昨晩の情事の名残が色濃く残っているようだ。三人で夜を過ごせるのは久しぶりで、おまけに翌日葵が休みだとあれば二人から激しく求められる覚悟は出来ていた。しかしそれでも想像以上に貪られた。リビングルームのソファで押し倒されてから始まり、もはや寝室に移ってからの記憶がロクに残っていない。 腰を庇うように少し前屈みになってリビングに顔を出せば、探していた聖の姿があった。コーヒーメーカーにセットしたカップを手に取りゆっくりと唇を付けるその仕草だけで絵になる。 シャワーを浴びたばかりなのか、まだ少し毛先に雫を残したままの黒髪も、シャツのボタンを一つも留めていないせいで覗く引き締まった身体も、昨夜見た光景とシンクロして妙な気恥ずかしささえ感じてしまう。 「なに見惚れてるんですか、葵さん」 葵が起きてきたことなどとっくにお見通しだったらしい。聖はカップから顔を上げ、余裕のある笑みを向けてきた。 「おはよ、聖くん」 "見惚れてた"ことには触れずにただ挨拶を返せば、彼は笑いながら葵の元へと歩み寄ってきた。いつのまにか大きく開いた身長差は、こうして真正面に立たれるとより実感させられる。けれど寂しいと思うよりも先に聖はいつも身を屈めて距離を縮めてくれるのだ。 「おはようございます、葵さん」 朝に相応しい挨拶としてのキスを落としながらも、葵の腰に回した聖の手の動きは艶めかしい。 「やっぱり痛くなっちゃいました?昨日あそこでいっぱいシましたもんね」 まるで思い出させるように聖が葵を抱き締めながらソファへと視線を向けた。三人掛けのカウチソファには葵の衣服が脱がされた時のまま転がっている。冷静な頭でそれを眺めると恥ずかしくて堪らない。

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