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翌朝(聖&爽×葵)2
「それからベッドでも……覚えてますか?」
葵が視線を背けても、聖は追い打ちをかけるように囁いてくる。耳元にキスを繰り返して葵を余計に恥ずかしがらせるのだから本当に意地が悪い。
恋人になっても彼等は葵に対して"後輩"としての態度を貫いてくる。呼び方も、話し方も。けれど、生意気なのは変わらない。むしろ後輩に可愛がられているという事実を実感させるために敬語を貫いてくるのだと邪推したくもなる。
「覚えてない」
「残念。じゃあ最後にお風呂入ったのも忘れちゃいました?」
葵が拗ねるのも気に留めず、聖は更に記憶を掘り起こそうとしてきた。本当はベッドでの記憶は少し残っている。だがその後のバスルームでの出来事はちっとも覚えていなかった。でもいつも何が行われてるかは知っている。目覚めた時に身体が綺麗な状態であることを考えれば昨晩も彼等が世話をしてくれたのは明らかだ。
「……ありがと」
「そこで怒れないのが葵さんの可愛いとこですよね」
葵が礼を口にすれば、聖は可笑しそうに笑ってダイニングテーブルに戻ってしまった。だが自分だけが席に着くのではなく、葵の分の椅子を引いて待っていてくれる。こういう時に不覚にも彼を愛しく思ってしまう。
「今日こんなに早起きするなんて知らなかった」
「だって教えたら葵さん泊まりに来てくれないでしょ」
簡単すぎる朝食を再開させた聖は悪びれもせず言い返してくる。確かにそうだ。聖が早朝から仕事が入っていると知っていたらきっと泊まらず、昨日のうちに帰宅しようとしていたと思う。葵との時間を優先させてくれるのは嬉しいが、負担になっていないかが葵には気掛かりだった。
「全然寝てないよね、大丈夫?」
聖の頬のラインは高校時代よりもシャープになっている。顔色は悪くないが、細身の彼の体が心配になって、思わず頬に指を伸ばしてしまう。
「大丈夫ですよ。むしろ葵さん堪能出来たから超元気です。肌艶いいでしょ?」
また仄めかすようなことを言って聖は笑ってくる。けれど意地悪なだけではない。今度は聖が葵の頬に触れ、気遣わしげに撫でてくる。
「葵さんは疲れた顔してる。ゆっくり寝てていいですよ」
「ううん、お見送りするよ」
眠くないと言えば嘘だが、このままベッドに戻る気にはならなかった。せめて共に居られる時間は最大限作りたい。
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